※茶々の「僕らは君らの味方」の続編です、四天というより千歳くん夢

 千歳くん、かっこええなぁ。
 千歳くんが転校してきて、テニス部に入って、なぜかいつの間にか千歳くんが好きになっとった。高いところにものを取ってくれたり、私の言葉に楽しそうに笑ってくれたり、小さな子猫に話しかけてたり、ありがとうもごめんも優しい笑顔で言ってくれたり、テニスをしているときは誰よりもかっこよかったり。
 気付いたら好きだった。部活中もつい目で追ってしまうし、千歳くんが告られたなんて聞いた時は結構ショックで、こんなに近い私は何もできていないのに、たとえば、もし千歳くんが他の誰かと付き合ってしまったら、どないしよ、どないしよ、どないしよ、とみんなの声も頭を上を通り過ぎていくみたいに聞こえなくなるのだった。

「好いとうよ、ナマエちゃん」
「えっ」

 耳に入ってきてから真っ直ぐ脳にズガーン!と突き刺さって思わず聞き返してしまった。
 どうしようもなく間抜けな顔をしていたのか、千歳くんはいつもの余裕のある笑みで「ははっ」と笑うと、ベンチの背もたれに背中をくっつけた。
 みんなで遊ぼうとなって遊びに来たんだけど、いつの間にかはぐれてしまった。携帯も繋がらなかったので少し二人でぶらぶらして、今、クレープを片手にベンチに座っているんだけど、何で、こうなったんや。

「急にびっくりした?」
「えっ、なんっ、えっ」
「みんなが作ってくれたチャンスやけんね、無駄にするわけにはいかんたい」
「えっ、は?みんな?えっ?」
「ん、みんな」
「えええええ嘘やろ、え、もしかしてここらへんにおったり…」
「おらんおらん。場所教えとらんし」
「あ…」
「さすがに、二人きりがよかろ」
「え、ちょ、もう、千歳くん、私ほんま、えっと」
「まぁクレープ食べなっせ」

 溶けるばい、と千歳くんが言うから、少しだけかじったクレープにまたかじりついた。
 え、千歳くんが私のこと好き、って言うた、よな?ほんで、なんか、みんなも協力しとるみたいな、言うてたけど、え、ってことは今日一日そういうつもりで、なんかみんながコソコソ話したりしてたんはそれか、謙也とか明らかに挙動不審やったし…。あ、このクレープめっちゃ美味しいやん。ってちゃうくて!

「…えっと、千歳くん」
「ん?」
「さっきの、やけど」
「あー」
「あのな、私な、も、な、」
「ん?」
「…好き、やねん」

 そう言ったら千歳くんは嬉しそうに笑う。わあああああ恥ずかしい、めっちゃ恥ずかしい、みんなおらんでよかった、いやでもこの後付き合うことになりましたなんて言わなあかんとか、恥ずい、恥ずすぎる!

「千歳おったー!ナマエもおるでー!」
「…この声」
「金ちゃん、やね」

 金ちゃんが「おーい!」と手を振りながら走ってくるのを見て、二人で笑った。金ちゃんに続いてみんなもやってきて、白石が開口一番「何で連絡せんねん!」と怒る。私が電話をしても出なかったので千歳くんに言ってるらしく、千歳くんはふわふわ笑いながら答えた。

「好きって言う時くらい二人きりがよかもん」

 なぁ?と千歳くんが私に同意を求めるから顔に熱が集まった。白石の「えっ」という声を皮切りに、謙也やユウジが「えええええ!!」「いや!アホな!」「まさかっお前!」と慌て始めるからますます恥ずかしくなって少し俯いたらそばにいた金ちゃんが「ナマエ真っ赤やー」と余計なことを言う。

「おおおおおおまえっナマエ!やない千歳!」
「どうなったの!?」

 謙也や小春ちゃんが迫りくるから、千歳くんも思わずたじたじだった。目が合うと千歳くんは笑って、私の手を取って繋いだ。うわあああああめっちゃ手ぇおっきいいいい私めっちゃ汗かいてるうううううう。

「こがんなりました」

 叫ぶ声、むしろ雄たけび、みんなの声に周りの人たちが何や何やと見てきて恥ずかしい。もう恥ずかしすぎて私は声も出なかった、ただただ顔が熱くて手も熱くて体が汗でじわじわと濡れていく。
 ひとしきり騒いだ後に「おめでとう!」「お前らなぁ!」「エクスタシーすぎるっちゅー話や!」とか言うからまた恥ずかしい。その間もずっと千歳くんは私の手を離さなくて、みんなで帰ってる時も一番後ろで手を繋いで歩いた。
 私の家が近くなると千歳くんはみんなに聞こえないように「夜、連絡するけん」と言うから、もう、これが夢見心地っちゅーやつかと浮かれまくったら躓いて、前を歩く謙也にぶつかった。

「きゃあっ!」
「おぉっ!?どないしたナマエ!」
「こっ、こけた」
「大丈夫ね?」

 躓いただけだから手は離れなかった。でも千歳くんがぎゅっと私の手を握る力を強めたから何故か今日一番ドキドキした。
 みんなが笑って「浮かれすぎとちゃいますか」「アホや〜」「調子のんなやっ」「気ぃつけやー?」と言うから笑う。あぁもう、君らは!

「うん、ありがとう」

 クレープはどさくさで落としてもうたけどお腹いっぱいなくらい!君らのおかげで私は幸せ者やわ!


20120526
二十万打フリリク@ふずかさん
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