※ツイッター@u_17maneから。U-17の合宿に参加した四天のマネージャーがお相手。



 喉が渇いたからとマネージャー部屋でパシりジャンケンが始まった。最後の最後で負けた。

「行ってらっしゃいナマエちゃん」
「ごめんね、お願い」
「五分以内ねー」
「鬼かっ!」

 立海のマネージャーはあのメンバーの中でやっていけるだけのことはあって言いたいことをよく言う。まぁツッコミやすいしボケやすいんやけど。しかし五分以内はないやろ、この施設めっちゃ広いやん、めっちゃややこしいやん、私一人でちゃんと帰れるやろか。
 自動販売機に行くまでに誰にも会わなかった。え、みんなもう寝とるん?あ、もしかしてまだ自主練しとるんかもしれへんな。…こういうときは、マネージャーて何すればええんやろ。
 そんなことを考えながら歩いていたら自動販売機についた。ガコン、と音がして、ついでに侑士くんと目が合う。

「…おう」
「こんばんはぁ」
「こんばんは。一人なん?」
「パシりや。五分以内に帰らな王者にしばかれてまうねん」
「王者?…立海か」

 侑士くんは笑いながら自動販売機からお茶を取り出した。そして一歩下がると「どーぞ」と優雅に私に譲る。

「どうも。えー…コーラとなっちゃんとー」
「っちゅーか、七本どうやって持って帰るん?」
「あ、四本やねん。せやから大丈夫」
「さよか」

 侑士くんはそう言うと、自動販売機の前の椅子に座った。ペットボトルの蓋を開けると一口飲み、ジュースを買う私に声をかける。

「女子部屋は楽しそうやな」
「男子部屋は楽しくないん?」
「楽しくないっちゅーわけやないけどな、謙也とかやかましいねん」
「まぁ女子部屋もやかましいけどな」
「お前とかか」
「誰がお前や」
「すんまへんナマエさん」

 よろしい、と笑いながらジュースを四本持って侑士くんの隣に座ると侑士くんは「飲むか?」とお茶を渡してくれた。「ほな一口だけ」と頂く。

「ん、ありがとう」
「今日はちょっと冷えるな」
「せやな。風邪引かんごとせなあかんで」
「オカンか」
「誰がオカンや」
「すんまへんナマエさん」

 侑士くんが笑う。それを見上げたら、なんか、あれ、こんなに侑士くんと近くで話すの初めてかもしれへんと思った。いつもはコートや屋内で立ち話するだけだから、今みたいに隣同士に座って話すなんて滅多にないのだ。
 わー、改めて見ると綺麗な顔しとるなぁ。眼鏡の奥なんか、よう見たら鋭くて強い。ずっと見つめられたら、なんか、多分泣きそうになりそうやと思った。
 少し見つめていたら、侑士くんが困ったように聞いてきた。

「…何?」
「あ、いや、侑士くん改めてイケメンやなって。謙也とあんま似てへんな」
「たかが従兄弟やしな」
「モテるやろ」
「モテへんて」
「嘘やー」
「どっちかっちゅーと謙也やろ?」

 そう聞かれたから「えっ」と呟いた。その質問に戸惑ったのではなく、一瞬思ったのが「いや侑士くんやろ」だったのだ。
 え、何でやろ。謙也のが付き合いも長いし、よく知っとるのに。

「ナマエ?」
「!」

 わ、わ、侑士くんが私のこと呼び捨てしたん初めてや、いっつもナマエさんとかナマエちゃんとかふざけたみたいに言うのに、呼び捨てや、あれ、何やこれ、めっちゃドキドキすんねんけど、侑士くんめっちゃかっこええんやけど、目が、目が近い。

「あ、えっと」
「…なんやそれ、期待してまうで」
「えっ」
「いや、ちゃう、待って、すまん、何言うてんねんやろ」

 侑士くんはそう言うと口元を長くて綺麗な指で隠した。
 いや私こそや、何恥ずかしがってんねんやろ、ノリで「そら侑士くんやわ」とか軽く返せばよかったんとちゃうか、何やこれ、この空気、あかん、耐えられへん!

「お、王者にしばかられるからそろそろ行くわ」
「ナマエ」
「ほなっ!」

 侑士くんが何かを言おうとしたのが分かったけどまた名前を呼ばれたからわあああああってなってジュースを落としそうになりながらわあああああと部屋まで帰った。

「遅いよナマエー」
「大変だった?」
「…どうしたの?」
「珍しく動揺した顔してるね」
「…」

 もちろん言えなかった。いや恥ずかしいやん、なんか、私がそんなん言うん。
 「ナマエ」と低い声で呼ぶ侑士くんの声を思い出すたび、みんなとどんな話をしてても心臓が変な方向に跳ねた。
 翌日は謙也と話してる時に侑士くんが来て、いつも通りに話せた。笑った。めっちゃ笑った。いつも通り楽しかった。けど、何やろ、何かな、なんか、めっちゃ、目ぇ合う気がすんねんけど、私めっちゃ見られて、るん、ちゃうか?
 あれ…待てよ…私も見とるやん!何やこれ!


20120506
二十万打フリリク@ムムムむさん
×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -