「ナマエ〜起きなっせ〜」
「…」

 起きてる。起きてるけど布団が気持ちいいし、この眠気に柔らかくのしかかられてる感覚がたまらない。千里はいつの間にか起きてて、もう朝の散歩も済ませたらしく着替えてコンビニの袋をテーブルに置いていた。それだけを確認してまた目を閉じる。

「起きんねー」

 そんな私に千里は笑いながらそう言った。ゆさゆさ揺すられたからうつ伏せになって顔を枕にうずめて声を出す。

「やだー布団がいいー布団が好きー」
「何てー?」
「うぎゃあっ」

 千里はわざと聞き返すと、布団の上から軽く私にのしかるから拍子に笑いが零れた。もちろん真剣にのしかかったりしないけど、それでも眠気がのししかかるのと比べると重い。いや、重いと言ってもちょっと気持ちいいくらいだけど。

「何すんのー」
「布団ば好きって言うけん」
「千里くんおもーいー」
「ははは」

 わー朝からイチャイチャしてんなぁ、私たち。少し眠気が飛んで、枕にけらけら笑いを吹きこんだら千里が「はーあ」と笑って私の頭の近くに顔を寄せた。そのままの体勢で少し顔を動かして聞く。

「千里くんどこ行って来たの?」
「んー?」
「コンビニ」
「セブンたい、ナマエの好きなやつ今日はあったけん」
「わ、ほんと?」
「んー」

 千里は機嫌が良さそうにそう答えると、私の乱れた髪の毛を指で梳く。
 私がこんな時間までぐだぐだ寝てるようなこんなだらしない女でも千里は怒らないし文句も言わない。私だってふらふら歩きまわる千里に怒らないし文句も言わないけど。
 好きなのだ、そんな千里が。千里がこうやって私に構ってくれてるところを見ると、千里も私のことを好きなんだろうなと思う。そう自分で思うと、布団に心臓が吸い取られそうな感覚に陥った。
 あーこのまま二人して布団に溶けちゃったりしないかな。

「今日映画観に行きたいなー」
「よかね。じゃあ起きなっせ」
「うん、どいてよ千里」
「えー」
「何それ」

 千里が矛盾するようなことを言うから笑ったら千里が私の髪の毛を耳にかけて、耳の付け根あたりにキスをした。そのまま近くで「じょーだん」と笑うから耳の近くからぶわっと髪の毛の先まで震えた。
 私の上から離れてベッドを下りた千里はテレビをつけてコンビニの袋を漁る。私は沈んだ体をのっそり起こして、髪の毛を撫でてから千歳の背中を見つめた。
 おっきい。多分、こんなに背中が大きくて可愛くてかっこいい彼氏を持ってる人は他にいないと思う。私だけ。私だけの千里くん。
 安心する布団がダメなら安心する千里がいいな、と油断している千里の腰に思いっきり抱きついた。

「わっ」
「千里くーん」
「まだ寝ぼけとると?ナマエちゃん」

 千里はそう笑うと、子供をあやすみたいにゆらゆら揺れ始めたから可愛くて笑った。
 違うんだよ千里くん、ナマエちゃんは千里くんがすっごく好きなんだ千里くん、でも鼻歌うたっちゃうあたり千里くんもナマエちゃんのことすっごく好きみたいだね、朝からイチャイチャしてんなぁ私たち、笑っちゃうわ。
 あ、千里笑った。もー好き。ぎゅー!もう映画なんかどうでも良くなってきちゃったなぁこの安心感、このまま溶け合っちゃおうよ千里くん。


20120525
二十万打フリリク@みかんさん
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