「おーう、ペテン師コンビ」
「おーう、マネージャー」
「…私までペテン師みたいな言い方やめてくれませんか、ナマエさん」
「入れ替わる時点で立派なペテン師だからね、柳生くんホクロ忘れてますよ」
「ありゃ」

 柳生の格好をした仁王の台詞を仁王の格好をした柳生に言ったら柳生の格好をした仁王が「柳生〜」と言った。ややこしい。

「何で学校でも入れ替わってんの?」
「誰かを騙しに行こうかと思ったんじゃがな。柳生、つめが甘いぜよ」
「すいません仁王くん。しかし誰かを騙しに行くなんてやはりどうにも気乗りしませんね」
「つまらんのう」
「それにしてもホクロだけでよく分かりましたね」
「なーんとなくね。あれ?って思ったらホクロないし確信したって感じ。未だに完璧には見破れないから安心して」
「俺らもまだまだじゃの」
「ですね」

 外見と口調が一致しないのが面白いなぁ、きっとこのまま授業に出てもバレないに違いない。
 廊下の向こう側に見覚えのあるモジャモジャが見えて「あ」と呟くと仁王の格好をした柳生が「切原くんですね」と呟いた。ちょうど私たちに気づいた赤也はこっちに向かって走ってきて、そこに偶然鉢合わせた真田が「廊下を走るな赤也!」と怒鳴る。真田のそばには柳と幸村で、四人はぞろぞろとこっちに向かってきた。

「貴様は何度言っても分からんのか!」
「すいませんって!」
「次からは気をつければいいよ、赤也」
「幸村、あまり甘やかすと…!」
「でも次は容赦しないからね」
「は、はい!」
「で、何の用じゃ赤也」

 おぉ、柳生のやつ仁王のふりを続けるつもりか、と仁王を見たら柳生の笑顔で仁王は笑った。黙っとけ、と。

「そーだ仁王先輩、この間の約束果たしてくださいよっ!」
「…約束?」
「アレっす!」
「はて、何じゃったかのう」

 端から見ればわざと忘れている仁王だけれど実際中身は柳生なわけだから、本気で約束が分かってないのだと思う。赤也が「またそうやって!」と怒るから「仁王、あまり後輩をからかうな」と真田が言った。さて、どうするのだろう。

「あぁ、もしかしてあれじゃないですか仁王くん」
「ん?」
「ゲームセンターでご飯を賭けて負けたとか言ってたでしょう」
「あー」

 お、仁王の助け舟。

「貴様らはまたそんなくだらんことを…!」
「あっ」
「ちょ、柳生先輩っ」

 ある意味逆効果。

「弦一郎、今回は許してやれ」
「しかしだな」
「今回はしょうがない、なぁ仁王」

 柳はそう言いながらちらりと仁王を見た。柳生の格好をした仁王を、だ。参謀は騙せなかったらしい。かなわんのう、と仁王が小さく呟くのが聞こえた。すると腕時計を見た幸村が呟いた。

「そろそろ戻らないと」
「む。そうだな」
「赤也ももう戻れ」
「うーっす。仁王先輩、今日は奢ってくださいよ!」
「へいへい」
「柳生、お前はまだ戻らんのか」
「えぇ、少し職員室に用事があるので」
「そうか。授業には遅れるなよ」
「はい」
「じゃあね、柳生、仁王、ナマエ」
「はいはーい」

 にこやかな幸村に手を振ると、ふぅと仁王がため息をついた。

「柳生、勝手に奢るとか言わんでくれるかの」
「約束ならば守りべきですよ、仁王くん」
「ってか柳にはバレてたね」
「幸村にもな」
「えっ」
「そうですね。帰り際に名前を呼ばれたときの視線が、明らかに」
「ほんと、まだまだじゃの」
「でも赤也も真田も騙せたじゃん、上出来だよ」
「お、仁王。お前次教室移動だぞ」
「…あとブン太もね」
「あ?」
「ですね」
「あ、お前柳生かよ!」
「プリッ」


20110818

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