立海の試合を見ている途中、跡部がそろそろ行くぞと立ち上がったから慌ててついて行った。みんな歩くのが早い、少しは気を使えという感じである。歩幅が似ているジローはどっか行ってるし岳人は前の方だし。
 試合をするコートにつき、タオルやドリンクを作っている時にふと気づく。

「あれ、私のタオルは?」
「知らんがな」
「さっきまで持ってただろ」
「さっきって?」
「立海の試合んとき」
「それからは?」
「知らねえよ!」

 岳人との掛け合いに気づいた長太郎が心配そうに「忘れてきちゃったんじゃないですか?」と言ってきた。そう言われるとそんな気がしてくる。

「忘れてきたかも…」
「ったく、激ダサだな」
「うるさいなぁ!」
「取ってきてやるよ」
「亮くん…!」
「黄色のやつだろ?」
「え、青やなかった?」
「ピンクです。やっぱり亮には任せられない、他の人の持ってこられたら困るし」
「何かあったのか?」
「跡部」
「ナマエさんがタオルを忘れちゃったらしくて…」
「アーン?」
「みんながさっさと行くから…」
「人のせいにしてんじゃねーよ」
「だって!」
「どれだ?樺地に行かせる」
「跡部様…!」
「宍戸といいツンデレばっかりやな」

 誰がツンデレだ!アーン?とかいう声と共に笑ったら、ふと岳人が呟いた。

「っつーか立海まだいるだろ、あっちのマネージャーとか仲良くなかったっけ、お前」
「あ、そうか!」
「ダメなら今若も走ってるしな」

 樺地行かせるまでもねぇか、と跡部の呟きを聞きながら立海のマネージャーちゃんに電話をした。真田くんっぽい叫び声のあとに「もしもし?」という声が聞こえたからタオルについてを話す。

「何て?」
「今からこっち来るから持って来てくれるって」
「そら良かったなぁ」
「っつーかジローはどこ行った?」
「え、知らないよ」
「あのバカ…」


「ナマエー!」
「お、来たみたいだな」

 岳人に言われて振り向くと紛れもなく私のタオルを持った彼女が走ってきてくれた。後ろの方から立海メンバーもついて来るから跡部たちも立ち上がる。

「ありがとー!本当に助かった!」
「いいよ、面白いもの見れたし」
「え?」
「お前は…!」

 彼女の言葉に真田くんが後ろからやってきて低い声で呟いた。跡部が横にきて「よう、立海」なんて挨拶をする。しかし、おぉ、相変わらず威圧感、というか立海メンバー自体が少し怖いので、私はニコニコした幸村くんに下手な笑顔を返すしかなかった。って、あれ?立海の中にいる、一人だけ青いジャージの金髪は…

「ジロー!」
「わっ、ほんとだ」
「よ!」
「よ、じゃねぇよテメェは…」
「さっき見つかっちまって」
「ごめんね、丸井くん…。ジロー、迷惑かけちゃダメでしょーが」
「えー迷惑なんかかけてないCー!」
「はいはい、こっちおいで」
「こっち来いジロー」
「はーい」
「じゃあね、芥川くん」
「じゃなー」
「ばいばーい」

 暢気な挨拶をかける彼女と丸井くんにも呆れた。相変わらず二人ともマイペースだ。ジローがこっちに来たところで、あ、そうだ本題、とタオルを差し出してくれた。

「ありがとう〜」
「良かったな」
「うん。ってかほら亮、これだからね私の」
「いちいち見ねーよそんなの」
「可愛いでしょ、見ろ!」
「あーカワイイカワイイ」
「跡部!亮が!」
「他校の前でみっともねぇ喧嘩すんじゃねぇよ…」
「あっごめん」
「いや、うん…なんかわかった気がした…」
「だろぃ」
「だから言ったじゃないですかー」
「確かに違うな」
「え?何?」
「ううん、じゃあ私たち向こう行くから」
「あ、うん、本当にありがとう!」
「はーいよ。じゃ」
「じゃあねー丸井くーん!」

 うるせぇよジロー、と岳人が言ってジローがうるさくないよ!とまた大声で言うからうるせー!と岳人が大声で言う。すると忍足がナマエ、携帯鳴っとるでと言ってきた。ほんとだ、ジローと岳人の声で気づかなかった。

「メールか」
「うん、さっきの」
「立海の?」
「うん。忘れてたって」
「何を?」
「ん?なんか写メが…ぶは!」
「なんや、どないしたんナマエ」
「これ…!」

 添付されていたのは私のタオルを持った真田くんだった。元からアンバランスな上に真田くんは明らかに怒っている。けど正直笑えたのでみんなに見せたらみんな笑った。すると笑っていた忍足がふと「跡部が無言で腹抱えとる」と言うから跡部を見れば、跡部は口元を隠しながら私たちから顔を背けていた。肩が少し震えている。

「わ、珍しい!」
「写メっとこ!」
「俺もー!」
「私も!跡部こっち向いて!」


20110807

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