全国大会のとある試合後、快勝をおさめた私たちはぞろぞろとコートを離れようとしていた。次の試合どこだっけ、とブン太とプリントを見ていたら真田に後ろから「ナマエ」と話しかけられる。

「ん、何?」
「これはお前のではないか?」
「え?」

 真田が持っていたのはピンクを基調とした可愛いキャラクターが描かれた可愛らしいタオルで、一緒に振り向いたブン太が小さく笑う。

「似合わねえ…!」
「ブン太、そんな本当のこと言っちゃだめだよ」
「いやいや幸村もね」
「な…!お前ら…!」

 怒りそうな真田をよそに、私たちの笑い声に気づいた赤也たちがやってきて同じように笑った。その中で柳が真田に言う。

「弦一郎、それはナマエのではないぞ」
「? なぜだ」
「ナマエがそんなピンクめいたものを持つとは思えないからな」
「え、何それ、似合わないってことか?はい?」
「実際ナマエさんピンクあんま持たないじゃないっすか。丸井先輩のが持ってますよ」
「俺は何でも似合うからな」
「私だって似合うし!」
「これはお前なのか違うのかはっきりしろ!」
「怒んなくてもいいじゃん!違うわ!趣味じゃない!」
「そのキャラナマエの嫌いなキャラじゃしのう」
「別に嫌いってわけじゃなくてさぁ、こう、趣味じゃないから鳥肌たつっていうか、絶対持たないなって思うだけ」
「っつか、ナマエのもんじゃないってことは忘れ物ってことだよな?」
「あっ」

 ジャッカルの言葉にみんなが確かに!という雰囲気になる。さすが気遣い屋さんである。すかさず紳士が言った。

「それは大変ですね、早く届けないと」
「届けるって誰のかも分かんねーんだろ?」
「とりあえず真田、あまりにも似合ってないから写メるね」
「あ、それ俺にもくれい」
「俺も」
「俺も欲しいっす!」
「じゃあ俺もお願いしようかな」
「貴様等…!」
「あーいいね!怒ってるのがまた!」
「逆効果だな」

 静かに笑う柳と、幸村を含めはしゃぐ私たちに真田は爆発寸前だが爆発できないようだった。やべ、楽しい、と写メっていたら着信が入った。カメラを一緒に覗き込んでいた赤也が「あれ、この名前」と呟く。

「氷帝の」
「うん、マネージャーだ」
「ですよね」
「ちょっとごめん」
「ってかそろそろ移動した方がいいんじゃね?」
「貴様等がうだうだと…!」
「弦一郎、ナマエが電話中だ」
「ぐ…!」
「もしもし?」
『ナマエ?今どこにいる?』
「さっきまで試合してたコート。えっと番号は…」
『あ、いや、さっきまで見てたからいいんだけどさ、そこに私タオル忘れちゃったみたいで…!』
「もしかしてピンクのやつ?」
『そうそう!ある?』
「あるっつーか今誰のかなって言ってたとこ。次試合でしょ?どうせ観に行くから持ってくわ」
『ほんと?ありがとう!』
「あいよーじゃあね」

 ピッと携帯を切れば、柳と何かを話していた幸村が「持ち主が見つかったみたいだね」と言った。

「うん、氷帝の子のだって」
「確かにあの人なら持ってても違和感ないっすよねー」
「ナマエよりはな」
「いやいや、あいつもなかなか言うよ?」
「ナマエほどではなかろう」
「仁王に何が分かるの!」
「いや、この間その人見たんすよ。で、あんなんナマエさんなら絶対言わねーって話を」
「は?何が?」
「ジローくんが居眠りしててさ、それを起こしてたんだけど起きなくてな。…お前ならなんて言う?赤也が寝てたとして」
「早よ起きろボケカス蹴るぞ」
「可愛い後輩にひどいっす…」
「あの子は『ジローの馬鹿!跡部に怒られても知らないからね!』だぜ?この差」
「赤也の馬鹿!もう知らない!」
「それはハイジじゃ」
「赤也が…赤也が立った!」
「そのへんにしときんしゃい」
「しかもその後『私が跡部に怒られるんだってば〜』って言ってたっす、正直可愛かったっす」
「…幸村は私に怒らないし、そもそも赤也が寝てることに真田が怒るし。根本的に違うじゃん、バカじゃねーの」
「だからそれが」
「いいからさっさと歩かんか!!」
「はい!」
「へーい」


20110807

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