おいそこの君、跡部がモテるのを知ってるか?氷帝にはファンクラブもあるんだぞ?他校の子からもラブレター貰うんだぞ?それどころか部員のお母様方も跡部を「いい男…」と表現するんだぞ?いや、まぁ、そう言ったのはうちの母親なんだけど、でも本当に跡部はお母様方からも人気がある。気品のある整った顔立ち、イギリス育ちであるが故のレディファースト、いつもは尊大な跡部だが監督に対する態度を見て分かるようにお母様方にも礼儀正しい。しかもその礼儀な正しさは付け焼き刃や誰かの模倣ではなく、完全に幼少の頃から叩き込まれた完璧な礼儀なのである。それがまたお母様方を虜にする一因なのであろう。

「岳人んちのお母さん来てるね」
「げっ、まじかよ。ただの練習試合っつったのに」
「あ、ほんとだ〜」
「跡部と話しとるな」
「あれ絶対高音で喋ってるぜ」
「しかし跡部人気あるよね」
「は?今更だろ?」
「いや、お母様方にも大人気じゃない」
「あー。そういや顔も良くて礼儀正しい、いい部長さんとか母ちゃん言ってた」
「俺んちも言ってた!あんたと本当に同い年なの?って言われたC!」
「あ、それ私も言われた!」
「俺も」
「まぁ、あれを見る限りそらぁそう言われるわなぁ」

 忍足の言葉に跡部に目を向ければ、にこやかに話す岳人のお母さんと明らかによそ向けの優しい笑顔をする跡部が目に映る。

「なんだあの笑顔、私たちには絶対見せないよ。岳人のお母さーん、あれは偽物ですよー」
「あれが需要あるんやからしゃあないわ」
「テニスしてるときも見てんだし理解はしてるだろ母ちゃんも」
「俺様の美技に酔いな!ってね!」
「ジロー今日は元気やなぁ」
「試合は好きだもんな、お前」
「練習試合だけどね」

 そんな話をしていたら、向こうから亮と長太郎がランニングから帰ってきた。タオルを用意しながら真面目が帰ってきた、と岳人と忍足を見れば「俺たちも行くっつーの!」と岳人が立ち上がる。

「お母さんとなんか話せんでええんか?」
「する話なんかねーよ!」
「お疲れー二人とも。はいタオル」
「ありがとうございます」
「サンキュ」

 二人にタオルを渡し、岳人と忍足がジャージを脱いでる中、私は亮の顔を見てとあることをふと思い出した。

「…あ、そういえばうちのお母さんがさぁ」
「あ?」
「跡部くんはいい男だけど一番亮が好きなんだって」
「は?何だよ急に」
「確かにナマエの母ちゃん、亮のこと好きだよな」
「昔からだよね〜」
「がっくんとジローちゃんは弟みたいで可愛いって」
「いまだに可愛い扱いかお前ら」
「よくおやつ貰うな。なぁジロー」
「ねー」
「あと忍足くんはイケメンでしっかりしてて医者の息子で将来有望って」
「将来有望て」
「しっかりしてるかぁ?侑士」
「うちに来たとき手土産持ってきたじゃん?」
「オカンに持たされただけやけどな」
「で、長太郎くんも将来有望のイケメン、あ、草食男子っぽいってのも言ってた」
「また将来有望かい」
「弁護士の息子だからね!」
「ははは…」
「草食男子なのは頷けるな」
「だな。お前もうちょっと話しかける努力とかしろよ」
「あー、あの子ね、進展ないんだ?」
「や、やめてくださいよー…!」
「ははは。あ、あとね、日吉はキリッとしてて姿勢がいいし、お母さん好みって言ってた!」
「結局みんな好みだねぇ、ナマエの母ちゃん」
「まぁね。中でも亮が一番らしいけど」
「何でなん?」
「さぁ?昔からだよ。私たちの世話焼いてくれるからじゃない?」
「よっ、ガキ大将!」
「誰がガキ大将だ!っつーかジローも走っといた方がいいんじゃねーのか」
「ん〜」
「あ、そうだ、俺ら走るんだった」
「跡部に怒られるで、ジロー」
「じゃあ俺も岳人たちと一緒に走ろうかな〜」
「ジロー、またハーフパンツも一緒に下げてるよ。トランクス丸出しでアンタは」
「あっちゃ〜」
「あっちゃ〜じゃないからね」

 ハーフパンツどれ?これ?それは長ズボンや。じゃあこれか!ってかハーフパンツ汚れてんじゃねぇか!昨日雨降ったんだから寝るときは気をつけろって跡部に言われたでしょ!あれ?ははは、忘れてたーなんてやっていたら「おい、テメーら」と跡部の声がして一斉に振り向く。岳人のお母さんに対するあの笑顔はどこへやら、いつものすました跡部だった。

「ランニングは済ませたのか?」
「今から行くとこだっつーの!」
「岳人のお母さんと何話してたの?跡部」
「別に。あぁ、世話が大変だろうけどこれからもよろしくしてやってくれとは言われたな」
「くそくそババア…!」
「そんなん言うたらあかんやろ」
「跡部、うちのお母さんは跡部が二番なんだ、ごめんね」
「何の話だよ」
「あと日吉くんが部長するって予想してた」
「だから何の話だ」
「お母さんの話」
「…」
「跡部、俺らランニング行くけど」
「お前もまだやろ?」
「あぁ、俺も行く」
「いってらー」


20110803

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