「ナマエさん」

 ベッドに横になったまま、ベッドに腰掛ける彼女を呼ぶと彼女は白くて滑らかな背中をくねらせて振り向いた。俺の煙草を吸っていて、普段吸うことのないその副煙流をできる限り肺に押し込めた。

「おはよう」

 ナマエさんは笑う。あと少しで乳房の頂点が見えそうだ、惜しい、最中は必死でなかなか見ることができないからじっくり見たいのが本音だ。するとナマエさんは俺の考えていることが分かったみたいにまた背中を向けて、可愛らしく「煙草もらってまーす」とまた煙を吐いた。軽くもどかしく、残念に思いながらもナマエさんの背中に言葉をかける。

「吸えるんスね、煙草」
「まぁね、たまに。静雄の味がするよ」

 本人は意図してるのかしていないのか、言い方がいちいち卑猥だ。背中があまりにも白くて綺麗で、肩甲骨やくびれを舐めるように見つめた。ああ、くそ、男ってのは本当に馬鹿だ、好きな女にどこまでも貪欲でいやらしい。

「ナマエさん、背中吸っていいスか」
「だめ。お客さんに嫌われちゃう」
「…」
「煙草なら吸っていいよ」

 ナマエさんはしなやかに振り向いて、するりと俺の口にさっきまで自分が吸っていた煙草を入れた。少し湿った煙草は短いけれど、どこかナマエさんの匂いがして尚更興奮した、満足したはずの下半身が性懲りもなく疼く。今度はばっちり胸が見えた、少し揺れた、長い髪の毛をナマエさんが乱れないように耳にかける、煙草を口から取り出して、ナマエさんが離れないうちにキスをした。いつもと違う俺が吸う煙草の味がする。

「ん」
「…ナマエさん」
「これ以上するなら有料にしようかな」
「商売上手っスね。出世払いでお願いします」
「どっちが上手なのよ」

 くすくす笑いながらナマエさんがベッドに潜り込む。出世なんか興味ねぇし出来るとも思えねぇけど、ナマエさんのためなら。そう言ったらからかわれるだろうからやめた、ナマエさんが何か言う前に口を塞ごうとしたら、構わずナマエさんは口を開く。

「私結構高いんだからね」

 知ってる、くそ胸糞悪ィ金持ちしか相手にしないのも、何人も客がいるのも、ナマエさんが一番感じるところも、セフレがいるのも、トムさんの元カノってのも、恋人が俺一人ってのも、俺は全部知っている。


20110427
五万打記念フリリク@ミカンさん
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