近くのコンビニに行こうとしたら走っている宍戸を見かけて呼びかけた。宍戸はすぐ気づいてくれて、こっちに来てくれたけれど宍戸が持っている長い紐のようなものと、その先に繋がれた生き物に私は思わず声を上げる。

「宍戸ストップ!」
「あ?なんだよ」
「犬!わんちゃん!私苦手なんだわ!」
「いや、うちのは大人しいし」
「大人しくても無理!うわぁ!ちょ、待っ」
「うるせぇよ」

 笑いながら宍戸はわんちゃんを抱き上げて、こっちにやってきた。確かに宍戸の家のわんちゃんは大人しくて、黙ってジッと抱かれているから見る分には可愛いと思った。

「可愛いね」
「だろ?」

 宍戸のこんな嬉しそうな顔はレアだなと思った。将来親ばかになるんだろうなとも思う。…その子供を私が産めればいいな、と思ったのは内緒として。

「お前何してんの?」
「コンビニ行く途中」
「ふーん」
「興味なさそー」
「っつーか、前髪切った?」
「…切ってない」
「切ってないなら隠さなくてもいいだろ」
「うるさいなぁ、失敗したんだよ」

 切りすぎた前髪を隠すと宍戸はニヤニヤと笑った。こういうのには目敏いからムカつく、何なんだ。あーもー、と苦々しく呟いたら宍戸が笑いながら「いいんじゃねーの」と言った。

「バカにしてんの?」
「してねーよ、別に」
「あーやだ、学校行きたくない」
「俺が一番最初に見た?」
「この前髪?当たり前じゃん、さっき切ったもん、今からやけ食いすんだよ」
「ふーん」

 さっきと同じ「ふーん」だったけど、何だか宍戸は嬉しそうだった。何が嬉しいんだ、彼女が笑われるのがそんなに嬉しいのかお前は。睨みつけたら宍戸が慌てて言った。

「いや、可愛いって」
「えっ」
「ってこいつが」
「ずる!何それ!恥ずかしいからってわんちゃん使わないでよ!」
「は、恥ずかしがってねぇよ別に!」
「可愛いんでしょ?ね?顔赤いよ?」
「うるせぇ!」
「わん!」
「きゃぁっ!」
「わ、バカ!悪ぃナマエ、大丈夫か!?」
「もーやだー!宍戸のバカー!」
「何で俺なんだよ!」
「可愛いって言えバカー!」
「可愛いっつーのバカ!」
「わん!!」
「ひゃあ!ごめんなさいいい!」
「このバカ犬!ナマエ、まじ悪い!」
「踏んだり蹴ったりだ…」
「悪かったって…」
「あ、ちょ、宍戸、わんちゃんの口押さえちゃったら可哀想だよ」
「…」
「なに?」
「いや、そういうとこ、好き、っつーか…」
「!」
「! 今のなし!」
「宍戸顔真っ赤だよ…」
「お前もだろーが…」
「わん!」


20110409
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