ステラちゃんが寝たのを確認して立ち上がろうとすると、ちょうど柚樹がやってきた。柚樹はそれはもう疲れ切った顔をしていて、数時間前も苦戦していた報告書か何かに未だ苦戦しているらしい。馬鹿だもんなぁ、と呆れ笑いをすると柚樹は私の顔を見て泣きそうな顔を向けてきた。子供みたいだ。

「ステラは〜?」
「今寝たよ」
「…充電していい?」

 甘えたような表情が何となくステラに似ている。ステラが柚樹に似たのか柚樹がステラに似たのか。捨て犬を思い出させる瞳に呆れる。

「いいよ」

 そう言うと柚樹の表情はパァッと明るくなって、それこそ犬みたいに抱きついてきた。あまりにも勢いがありすぎてびっくりしたけど、柚樹の体温が暖かすぎてホッとした。柚樹は情けない声で呟く。

「終わんねえよぉぉぉ」
「だから早めにやっときなさいって言ったのに」
「…」
「私明日早いからもう寝るよ?」
「えっ、うそっ、やだ」
「やだって言われても…」
「俺も寝ようかな…」
「いやいや、提出期限明日なんでしょ」
「ステラ〜」

 柚樹はそう言いながら離れ、寝入るステラに近づいた。ベッドに顔を近づけてすぐ、にへらとだらしのない顔になるのが面白い。

「起こしてあげないでね」
「ん」

 ちゅ、と上機嫌に柚樹はステラの頬にキスをした。画になると思うけれど、見てくれだけだと知っているから笑える。柚樹の隣に同じように座ると、柚樹が優しく笑った。

「可愛いな」
「可愛いね」
「ナマエがな」
「柚樹がね」
「…」
「…」
「…ちゅーしたい」
「充電?」
「純粋に」
「純粋にって何?」
「理由なんかいいだろ」

 私の返事なんか聞かないで柚樹は顔を近づけてきた。近くでステラが寝てるのに、と思いつつ黙って目を瞑る。ふと手を握られてそっちに意識がいった間に唇が重なって、柚樹の手を握る力を強めたら近くで柚樹が笑った。

「なに?」
「やる気出た」
「そりゃ良かった。じゃあまた始めたら?」
「ん。もう寝んの?」
「うん。柚樹も無理しないで早く寝なよ」
「…最後にもう一回だけいい?」
「何を?」

 返事もなしにキスをされ、また手を握られてドキッとした。柚樹と呼ぶ前に再びキス、一回だけって言ったくせに。目で訴えたら柚樹は笑った。

「可愛い」

 そんなことで笑うなんて可愛いのはお前だ。


20110408
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