「退いてください宏さん、今日はホームなんだから応援に…!」
「熱があるんだから寝てろ」

 というやりとりを私たちは寝室のドアの前でかれこれ数十分続けている。寝室から私を出すまいとしている宏さんと、なんとか出ようと試みる私だが現役ゴールキーパーの彼(しかも元日本代表)の守るドアを突破できる可能性はほぼないに等しいだろう。それが分かっているのか呆れているのか、宏さんは笑っていた。こっちは熱があろうが何だろうが、宏さんを応援するために命を賭けているというのに!
 むきになって大きな宏さんの体を押すけれどびくともしないし、ますます宏さんがくっくっくっと低い声で笑うだけだった。年上だから当たり前かもしれないけど、この人はいつも子供扱いだ。

「ひーろーしーさーんー」
「はいはい。ちゃんと頑張ってくるから。な?」
「そういう問題じゃないんです!」
「とりあえずナマエの風邪が悪化するのは大問題だな」
「う…!」
「すぐ帰ってくるよ」
「もう…!」

 ぽんぽんと頭を叩いてくれる動作はやっぱり子供扱いで、悔しくなって思い切り叫んでやった。

「宏さん嫌い!」
「えっ」
「(今だ!)えい!」
「あ、こら!」


20110530
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