「最近頑張ってるね」と先生に言われてパッと思い浮かんだのが亮だった。最近更に絆創膏の使用量が増えた亮を思い出して、「ぼちぼちです、ね」と答える。あれには適わない。
 私が頑張っているとしたら亮が頑張っているおかげだと思う。あんなに真面目で一生懸命な彼を見ると、自分だけのうのうと適当に生きていくのが恥ずかしくなるくらいだ。そもそも私は元から頑張ってない部類だから少し頑張るだけでも褒められるのだ。それは少し情けないけど、やっぱり褒められると嬉しい。頑張って良かったなぁ。

「ナマエ」

 点数の上がったテスト用紙をぼんやり見ていたら亮がやってきた。さっきの時間貸した教科書を返しに来たらしい。

「見て、亮」

 恐らく亮より高いであろう点数を見せびらかすと、亮は複雑そうな顔をして「おー、すげぇ」と言った。亮はそんな顔をするくらい悪かったのだろうか、と一瞬申し訳無く思っていたら急に亮は貸した教科書をパラパラめくり始めた。そして私のクラスではまだやってないページを見せる。何だ何だ。

「悪ィ、勝手に線引いちまった」

 確かに見たこともないページのはずなのに、一文だけマーカーで線が引かれていた。あぁ、それで複雑そうな顔をしたのか。亮のことだから真面目に話を聞きすぎて教科書が借り物だということを忘れてしまったのだろう、容易く目に浮かんで笑った。

「いいよ、ありがとう」

 亮はお礼を言った私をきょとんと見る。これでまた私は頑張れそうだ。


20110530
×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -