サンジくんが私たちに作ったおやつや飲み物の食器は食べ終わるといつも私がキッチンに持って行く。ナミはサンジくんが勝手に下げてくれるわよ、と言うけれど何となく悪い気がするから私はいつもキッチンに空いた食器を持って行った。するとサンジくんはキッチンに入った私に、優しい笑顔を浮かべてこう言うのだ。

「来てくれてありがとう」

 変なの、と笑って食器を渡すとサンジくんはまた笑って「そうかな?」と言った。鼻をくすぐるいい匂いがする、またケーキか何か焼いているのだろうか。

「ナマエちゃんはいつも来てくれるから嬉しいよ」
「でもそう言われると、まるで招待されたみたいな感じ」
「僕のキッチンへようこそレディ、来てくれてありがとう」
「そう、そんな感じ」

 サンジくんの執事みたいな動作に思わず笑うと、サンジくんも笑ってくれた。サンジくんはふと私の髪の毛を撫でた。びっくりして肩が跳ね上がると、彼は申し訳無さそうに謝る。

「ごめん、可愛かったから、つい」
「…恋人に触るのに謝るのって変だと思う、よ。びっくりしただけ」
「じゃあ…キスしてもいいかい?」

 さっきまでお姫様扱いみたいだったのに、急にそんなこと言うもんだから恥ずかしくなった。何だよ急に、かっこいいじゃないか。返事もしてないのにサンジくんは私の腰に手を置いて自分の方に寄せる。ジッと見ていたらサンジくんは恥ずかしそうに「そんなに…」と、見ないでくれと言いたいらしい、恥ずかしがり屋だ。目を瞑ってあげたらサンジくんの煙草の匂いが近くなって、唇が重なった。サンジくんの作ったお菓子を食べたときみたい、幸せ。
 甲板の方でナミが私を呼ぶ声が聞こえた。サンジくんと「呼んでる」「呼んでるねぇ」と鼻がくっつくかと思う距離で笑い、離れる。「じゃあ行くね」とキッチンを出ようとすると、サンジくんがウインクをした。どきゅん。

「また招待状出すよ」

 ? 何の話だろう。
 曖昧に返事をし、ナミの元へ行くと「本、届いたわよ」と頼んでいた本を受け取った。待ちに待った本だったから嬉しくて早速読むと、いつの間にかだいぶ時間が経っていてサンジくんが「今日のおやつです、レディたち」とケーキを持ってきてやっと集中が途切れた。あぁ、さっき焼いてたケーキだな、きっと。いただきます、とケーキを一口食べて気がついた。
 あぁ、このお皿が招待状か。また彼に会いに行ける。


20110330
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