一緒にいるくせにそれぞれ違う本を読んで時間を過ごすのは別に嫌いじゃない。ナマエからの文句も聞いたことがないし、ナマエのことだからむしろそういうのは好きなんだと思う。ただ俺はナマエの全てを知っているわけではないからそう易々とは判断できない。めんどくせぇけど、そうやって考えるということは俺はやっぱりナマエが好きなんだろう。
 ふとナマエがこっちに顔を向けているのに気付いてナマエの方を見た。けれど目が合わない。するとナマエの視線は俺の方ではなく、違うところに移動した。ナマエの視線をたどると、開けっ放しの窓から入ってきたのか紋白蝶が飛んでいた。どうやらあれを追っているらしい。ぽかんとだらしなく開けた口に、きょとんとした目が馬鹿みたいで笑えたけれど慌てて口を手で塞ぐ。気付かれなかったらしくナマエは相変わらず紋白蝶を見つめていた。紋白蝶はひらひらふらふらと飛び、あんなに薄いのによくやるもんだと思った。
 ナマエの笑い声が聞こえる。紋白蝶が笑ったのかと思うくらい小さなもので、視線をナマエにやると、ナマエは「シカマル」と可笑しそうに笑っていた。

「馬鹿みたいな顔してる」

 お前を見てたからこうなったんだよ、馬鹿。


20110329
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テーマ「人外ファンタジー」
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