「私のこと好き?」って聞いたらトシは仕事をしながら「あー好き好き」と適当に返してきやがった。今の彼にとって大事なのはどちらかと言えば仕事だからだ、こういうめんどくさい話題を長引かせたくないのだろうけれど逆効果だということに気づかないんだろうか。でも愛しい彼の仕事を邪魔するわけにもいかない、最後に一つだけ。「愛してる?」と聞けば「あー愛してる愛してる」と返ってきた。…ここでもし「嫌い?」なんて聞いたら「あー嫌い嫌い」と返ってくるんじゃないんだろうか。前言撤回、これが最後のもう一つ。「どれくらい?」と聞いたら「あーマヨネーズくらい」と返ってきた。相変わらず心のこもってない台詞なのに恥ずかしいことに私の顔は赤くなる。だってトシがどれだけマヨネーズを愛しているか、それは一番近くにいる私がよく知っているのだ。じゃあマヨネーズが足りないときにキレるみたいに、私が足りないときはキレたりするのかな、マヨネーズを取られたらキレるみたいに、私が他の男に取られたらキレたりするのかな。こんなのってズルいと思う。しばらくの間キュンキュンしていると、トシが背伸びをしたからその背中にまたキュンキュンしつつ呟いた。
「さっきの本心かなぁ」
「あ?何がだ」
けろっとした表情に、あぁあれは無意識なのか、ますます本心か分からなくなってしまったと思った。
「お仕事終わった?」
「あぁ。腹減ったな」
「ご飯行こうか」
「そうするか」
「ねぇトシ、私のことどれくらい愛してる?」
「ふざけたこと聞いてんじゃねぇ」
ぺん、と頭をたたかれた。愛しい彼は「せいぜいマヨネーズの次だな」と顔を赤くして言う。私も顔が赤くなる。
20110323