合格者発表の掲示板は人で溢れている。未だ自分の合否が分かっていないからか、やたら目に付くのは泣いている人ばかりだ。その人たちが悲しくて泣いているのか、嬉しくて泣いているのかは定かではない。急に不安になって隣の大石を見上げれば、彼は力なく笑った。気の弱そうな顔が更に弱々しい。

「緊張するな」
「うん、緊張する」

 そう答えると大石は前を向いて、すぅっと息を吸った。それを見習って私も息を吸い、肺にまだ少し冷たい空気を留めさせて、うるさい心臓を少し黙らせた。そしてゆっくり息を吐くと、そのタイミングが大石と同じで、お互いの顔を見るタイミングも同じで、軽く笑うのも同じだった。
 あ、何だか大丈夫そうな気がする。分かんないけど、このまま掲示板を見たら自分と大石の受験番号がありそうな気がする、むしろこのタイミングじゃないと受験番号がないような気さえするのだ。

「行こう、大石」
「よし」
「受かってても落ちてても抱きつくかもしれないから覚悟してね」
「分かったよ」

 大石が笑う。並んで掲示板に歩き、手に持った受験票がくしゃっとなってしまって、ダメだダメだともう一度息を吸う、吐く、やっぱりタイミングが大石と同じで可笑しくて再びお互い笑った。
 よし、うん、さぁ行こう。


20110314
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