気を抜くと泣いてしまいそうな、体中の水分が目から出たくて出たくてしょうがないみたいで、それを必死に抑えようとすればするほど変な顔になるから蔵に見られないように下を向いた。私はアホだからどうしてこんなに悲しいのか分からない。特に理由があるわけでもないのに、ふと蔵に優しくされただけなのに、蔵が優しいなんていつものことなのに、さっきまで楽しかったのに、ぶるりと体が震えて全てが嘘だったかのような、何もかもが敵のような気がしてくる。
 これが思春期特有のものだとすれば私はアホだからまともに影響を受けてしまうのだろう。いや、私が特別じゃなくてみんなそうなのかな。

「不安定やな」
「…うん」

 優しい蔵の声に、俯きながらもそう答えると蔵はポンポンと頭を撫でてくれた。あ、あかん、そんなことされたら拍子に涙が落ちてまう。

「アホでごめん」
「アホって。したら俺も不安定やし、俺もアホか」
「…蔵もそんなんなるん?」
「おん」

 そんなアホな、頭がよくて真面目で何でもできて、一見悩みもなさそうな蔵が不安定になるなんて。ふと浮かんだのはゆらゆら揺れる、やじろべえみたいな蔵で、やっぱり私はアホやと思った。頭の中でゆらゆら揺れる蔵とゆらゆら揺れる私が安定しようとつかみ合ってる姿が浮かぶ。

「…不安定同士でおったらそのうち安定するやろか」
「やじろべえみたいな?」

 蔵が笑った。あ、笑った、と安心して悲しさがぶっ飛んだ。やっぱり不安定みたいだ。


20110224
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