ネクタイが上手く結べない。そんな私を見て、リンクはいつもため息をつきながら私のネクタイを直してくれる。お兄ちゃんみたいだなぁ、と思うけれどリンクは正真正銘私はの恋人だ。恋人であるからして、私はリンクが好きでネクタイを結びなおしてくれるリンクをジッと見上げる。リンクはその視線に気づいてるくせに無視して、結び終わってから私を見て「できましたよ」と不満げに言うのだ。

「ありがとう」
「いい加減きちんと結べるようになりなさい」
「きちんとしてるつもりなんだけどなぁ」

 へらりと笑ったらムスッとした顔を返された。うーん、好き、だなぁ。
 リンクは何でもしてくれる。ネクタイはもちろん、ご飯を食べ損なったら何かしら作ってくれたり分けてくれたりするし、朝は布団を取り上げて起こす割にはコーヒーを淹れてくれて、ブラックが嫌だと言えばミルクと砂糖を淹れてくれる。全部怒りながらとかだけれど、私はそんなリンクが好きだし困らせたくなってしまうのだと思う。我ながら迷惑だし、よくリンクも付き合ってくれるなとも思う。

「ナマエは努力が足りないんですよ」
「してるよー」
「例えば?」
「…ご飯は残さない」
「どこが努力なんだ」
「はは、たまに敬語じゃなくなるの、好き」
「…」

 リンクはぐっと言葉に詰まった。今の顔、可愛い。何故か敬語が癖になってるリンクがたまに砕けて話してくれるのはとても好きだった。ほんと、年だって同い年だし敬語なんか使う必要ないのに。
 リンクはため息をついて私に背を向け、長い廊下を綺麗に歩き始めた。照れたのか怒ったのか分からない。あー、リンクの背中がどんどんちっちゃくなってくなぁ、寂しいなぁ。

「リンク、寂しいよー」

 少し大きめな声で言えば、長い廊下に響いて余計虚しい言葉になった。リンクは歩くのをやめて、少し止まってからまた私の方を向いて歩いてくる。怒ったような歩調、顔、一緒に揺れてる長い三つ編みまで不機嫌そうだ。

「お腹すいた」
「…」

 私の言葉に不機嫌そうだった顔は呆れ顔に変わり、額に手を当ててリンクはため息をつく。使っていないリンクの手を取って指を絡めたらリンクは諦めたように呟いた。

「勝手にしろ」
「うん、好きだよ」

 赤くなったリンクの顔に笑い、食堂に向かった。長い廊下に私たちの足音と「ネクタイは結べないくせに」というリンクの小さな呟きが少し響く。結んだ手のひらに力がこもって、嬉しくなった。上手に結べたよ。


20110223
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