お気に入りの傘を畳んで少し傘を揺らすと水滴が足について思わず「ひゃあ」と声を上げてしまった。外は薄暗くて夜から降り続けた雨のせいで街全体が陰気な感じだ。それは万事屋も同じことで、玄関を開けるといつもと違う暗いオーラが流れてくる。玄関にある靴は銀ちゃんと神楽ちゃんだけで、私も同じように靴を並べて中に入った。

「ただいまー」
「おかえりアル〜」
「お菓子とか買ってきたけどいる?」
「さすがナマエ!見た目通り太っ腹ネ!」
「冗談なのは分かってるけど泣いていい?」

 という私の呟きは無視されて神楽ちゃんがお菓子の入った買い物袋をあさり始めた。こういう子供らしいところが可愛いよなぁ、と思わず笑うと「お菓子」に反応しない人がいることに気づく。普段じゃ有り得ないけど今日は雨だ、天パの彼はデスクの椅子に座って恨みがましそうに窓から空を眺めていた。万事屋が暗い原因である。

「銀ちゃーん、食べないの?」
「…」
「そりゃ天パの人からすれば湿気多いのは嫌だろうけど普段とそんなに変わってないよ?」
「ナマエちゃんは俺を落ち込ませてそんなに楽しいの?」
「え、違っ」
「ナマエちゃ〜ん」
「うわっ」

 銀ちゃんは不機嫌で弱ったような声を出しながら座ったまま私の腰に抱きついた。ぐりぐりとくるくるした頭を押し付けてくるからくすぐったくて「うへあっ」と変な声が出てしまう。外で傘の水滴に濡れた時の方が可愛い声だった、となぜか恥ずかしい。

「ちょ、銀ちゃん、くすぐったい!」
「ナマエ〜」

 私は天パじゃないから銀ちゃんの気持ちがあんまり分からないけれどここまで悲壮感が漂っていると何だか可哀想になってくる。しばらくなると大人しくなってきたので頭を撫でてやった。

「そんなに天パが嫌なの?」
「当たり前だろ」
「可愛いと思うけどなぁ。私は雨好きだし」
「嫌だね、俺は遺伝子ねじ曲げてでもサラッサラヘアーのガキをつくる」
「ふーん」
「だからお前の遺伝子も頑張れよ〜」
「ちょ、念送らないでよ」
「絶対ストレートな、俺と同じ重荷は負わせねぇ」
「いやいや銀ちゃんの遺伝子の方が強いって」
「…っつーか俺のガキ生んでくれんの?」

 冗談みたいな声のトーンが急に真面目になって、目も合わせないところが恥ずかしがり屋だなぁと愛しくなった。

「頑張るよ、湿気にも雨にも風にも負けないような子を生むよ」

 と言ったら銀ちゃんは顔を上げて困ったような、嬉しいような顔で笑い、私のお腹に向かって「俺も頑張らねえと」と言った。
 銀ちゃんとの子供、生みたいなぁ。きっと可愛いに違いない、それでかぶき町のみんなに愛されて育って、私も銀ちゃんもその子を精一杯愛して、毎日楽しく笑って、たまに喧嘩して、仲直りして、そんな家族を銀ちゃんと作っていけたら幸せだなぁ。と笑っていたら神楽ちゃんの「イチャついてんじゃねーぞ天パ」という辛辣な言葉が降りかかってきたけれどつい無視してしまった。神楽ちゃんも銀ちゃんの生い立ちを少し知ってるからかそれ以上何も言わず、雨の音とお菓子を食べる音だけが部屋に響いた。あぁ、やっぱり雨も嫌いじゃないなぁ。


20110222
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