スーパーにて賞味期限ギリギリで助けた牛乳を開けてお気に入りのマグカップに注いだ。少し注ぎすぎたので一口だけ口に含み、そのまま電子レンジに閉じ込める。ぴ、とボタンを押すと中のマグカップはスポットライトを浴びながら回り始めた。ピーピーと鳴き出すまで覗き込む。鳴き出したレンジを開けて中からほかほかのマグカップを取り出して居間に行けば猛くんがソファーで寝ていたのでマグカップをテーブルに置いて猛くんを揺さぶった。

「猛くん、猛くん、起きて」
「ん〜…」
「猛くんったら」
「あ〜何よ〜」
「お話しして」

 そう言うと猛くんは眠そうな目で私を見て、眉間にシワを寄せた。嫌そうな顔をしているけれどお構いなしに服を引っ張ると猛くんは嫌々頭を掻きながら体を起こした。

「話って何を」
「何でもいいの、猛くんの声聞きたい」
「何それ」

 意味分からん、と言いたそうな猛くんをスルーしてホットミルクを一口飲んだ。喉を優しく撫でるように通り過ぎる感覚に少しホッとして、猛くんを見つめる。猛くんは私の視線をぼんやり受けながら口を開いた。

「…んじゃ、昨日の松ちゃんの話」
「またいじめたの?」
「いじめてないよ、からかってんの」
「ははは」

 猛くんの話を聞きながらホットミルクを飲むと段々体が暖まって、落ち着いた。猛くんの声がホットミルクに溶けたみたいで、飲むと猛くんから愛を貰った気がするのだ。

「猛くんとホットミルクは最強の組み合わせだね」
「何が?」
「すごく落ち着くよ」
「…なんかあった?」

 さっきまで寝ぼけ眼で松原さんの話をしていた猛くんは急に真面目な顔をして私に聞いた。
 手の平の中のホットミルクはだいぶ温くなり、量も少なくなってもう猛くんの愛しか残ってないんじゃないかなと思った。それを飲み干して、体の中に猛くんの愛が入ったことを確認して、猛くんに笑いかけて、猛くんの手を掴んで自分のお腹に押し当てた。

「赤ちゃん、できちゃった」

 猛くんはきょとんとした顔を私に向ける。何だか恥ずかしくなって笑ったらキスをされ、抱きしめられた。「びっくり?ホットミルクいる?」と聞いたら「いんや、でも、ちょっとこのまま」と猛くんは私のお腹を優しく撫でた。落ち着かないときはホットミルクと猛くんの声、あと猛くんの体温があれば最強だなぁ、と笑顔がこぼれた。



20110126
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