銀ちゃんがジャンプを読んでいて、その隣で私がチラシを眺めている。いたっていつもの仕事がない日の昼間である。
 あ、明日卵が安いからみんなで行こう、とチラシを眺めながら思っていると、ジャンプを読みながら銀ちゃんが気だるそうに話しかけてきた。

「なぁ」
「何?」
「こないだよぉ」
「うん」
「俺が飲みすぎてぶちまけた時によぉ」
「はい」
「お前が片付けてくれたじゃん」
「覚えてたの」
「おう。でよぉ、そん時な」
「うん」
「すげぇキュンときちゃって」
「…はい?」
「いや、だから、その」

 あまりの急な言葉に思わずチラシから目を離して銀ちゃんを見ると、銀ちゃんは顔を少し赤くして目を泳がせ、ジャンプを支える手には力がこもっているのが見て取れた。え、何これ、なんか私も恥ずかしくなってきたんだけど。

「えっと」
「あーもー何言いたいか分かんなくなっちゃっただろーが!」
「えっ、私のせいじゃないでしょ!」
「とにかく、アレだ、俺もナマエのゲロなら余裕で片付けられるっつー話だ、終わり、この話終わりな!」

 銀ちゃんはそう言うと、ジャンプをテーブルに投げ捨てて台所に逃げて行った。残された私はチラシをテーブルにそっと置いて、銀ちゃんを追いかける。
 冷蔵庫にあったいちご牛乳のパックをそのまま飲んでいる銀ちゃんを見て、上下する喉仏がすごくかっこよくて、手も、髪も、目も、とにかく銀ちゃんの全てが好きで仕方なくて、ぽろっと声が出た。

「ゲロの話なのに嬉しいんだけど!」

 私の勢いだけの言葉に口に含んだいちご牛乳を勢いよく吐きだした銀ちゃんは真っ赤な顔で「もう終わりっつっただろーが!」と怒鳴った。その顔が可愛くて仕方無くて笑うと、銀ちゃんは恥ずかしそうに近くに置いてあったタオルで床を拭き始めた。私も雑巾を持ってきて一緒に床を拭く。それだけなのに幸せって思っちゃうんだけど、私って、バカかなぁ、ねぇ銀ちゃん、好きだよ。


20110317
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