私に背中を向けてゲームに夢中になっている赤也を寝転がりながら見つめてみる。
 少し前より背中が大きくなっている、ような、気が、する、かもしれない。
 そりゃあ、あんなハードな練習をしていたら体も逞しくなるよなぁと、厳しい練習風景を思い出した。思い出すだけで疲れるというか同情するというか、うん、赤也、お疲れ様。好きだから頑張るよね、そんな赤也が好きだよ。

「あーくそっ!やべっ!」

 赤也の背中で見えなかったけど、背中の向こうからガチャガチャとコントローラーの音がするから赤也が負けそうなんだと思う。テレビ画面も見えないが、何度か聞いたことのあるゲームオーバーの音が聞こえて心の中で「ドンマイ」と呟いた。

「あーもーなんだよー」

 ぶつぶつ文句を言いながら赤也はまたゲームを始める。ほんと、好きだね、テニスもゲームも。彼女なんだから私も好きなはずなんだけど。
 寝転がったまま赤也に近づき、広くなった背中に甘えるように赤也の腰に抱きついた。

「うお」

 無言で急に抱きついてきた私に驚いた赤也は「なんっスか」と笑いながら私を見下ろした。

「なんとなく」
「ナマエさんもやります?」
「分かんないもん」
「暇なんでしょ?」
「赤也に抱きついてるからいいよ」
「集中できないんスけど」
「…」

 意外だ。いつもはすぐ抱きついてきたり膝枕を所望してくるくせに。可愛い。本当に困った顔をしてる。可愛い。母性本能をくすぐられる。

「可愛いなぁ」
「あーーもーー」

 思わずそう言ってしまうと、赤也は恥ずかしそうに自分の腰から私の腕を強引に外した。私も抵抗したけれど、あっという間に外されてしまってドキッとしてしまう。可愛いのに強いなんて。母性本能をくすぐられてたのに心臓を甘くくすぐられて、ますます大きな背中に抱きつきたくなった。
 またゲームをし始めた赤也の背中に薄く肩甲骨が浮かび上がって、そこに触れたいと思った。思ったと同時に手が伸びて、そのまま赤也の右の肩甲骨に触れる。

「う、わ」

 赤也がびっくりしたように肩をすくめるのと同時に赤也の首に絡むように抱きついた。赤也の癖っ毛が私の頬を撫でるのと、じわじわ体に入り込んでくるような赤也の体温に鳥肌が立ってドキドキする。

「急にっ」
「ゲームしてていいよ」
「無理ッス!」

 文句を言いながらも今度は私から逃げない赤也はやっぱり可愛くて、背中はやっぱり少し広くなったなぁと思った。背中が広くなったとか、気づくくらい私たちの付き合いも結構たったんだねぇ。

「あーかや」
「…はい」
「可愛いなぁ、赤也は」
「先輩の方が可愛いですって」
「ほんと?可愛い?」
「冗談ッス」
「…ブン太たちに似てきた」

 べしっと赤也の頭を軽く叩くと、赤也は笑いながら「いてっ」と言って私を見た。
 そして笑いながら子供のように「冗談ッスよ」と言うから腹立たしい。この悪戯っ子が!とまた抱きしめてやった。


20120301
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