母さんに「ナマエちゃんとは最近どうなの?」と聞かれた。奇しくも今日佐藤や鈴木にも同じことを聞かれた俺は、佐藤や鈴木にも返したように「さぁ?どうなってるんだろうね」と返した。母さんはおやつを食べながら「あら」と俺を見る。

「別れたの?」
「いや、なんていうか、クラス違うしメールも電話もしないし」
「あの子そういうの淡白そうだものねぇ」
「ね。すれ違って挨拶するくらいですよ」
「今時の自然消滅ってやつね。母さんナマエちゃん好きだったのに」
「ははは」

 単調な笑いを返す。別れたとか断定しないでくれますかお母様、俺だって好きですよナマエのこと。
 そうは言ってもやはり俺たちは恋人らしくなく、メールや電話をしようにも用がない限りメールも電話もしないナマエは「何?」と淡白に言うだろう。まぁ正直俺だって用もないのにメールも電話もしたくないし。
 「そんなんだからダメなんだよお前は!」と鈴木に怒鳴られたことを思い出した。鈴木には関係ないのに他人の色恋沙汰によくあんなになれるなぁ、と考えて脳内でまた「だからお前は!」と怒られた。やっぱりダメかこのままじゃ。
 俺からしてみれば楽だと思う。ただ「付き合っていれば」の話だ。付き合っていてこの関係性なら全く問題ないが、今は付き合っているのかどうかも微妙なところだ。「ナマエちゃんって“付き合ってるに決まってるじゃん”とも言いそうだし“え、まだ付き合ってたの?”とも言いそうだよね」と佐藤が言っていたのを思い出す。鈴木も頷いていたし、俺もそうだと思う。ナマエはそういう奴だ。
 聞けば早いだろって話だけど、もしナマエが付き合ってるつもりであれば怒りそうだ、「別れたいの?」なんて言いそうだ。いや、そうじゃないんだよナマエさん。

「…」

 そうじゃないんだよナマエさん、これでも別れたくないとは思ってたりするんだよナマエさん。
 俺って結構恋してたんだな、と頭に入ってこないテレビを凝視する。美味そうなケーキが出てきて一転、あぁそうだ、なんか作ろう、俺が作った菓子をナマエはいつも嬉しそうに食べてくれるから、作ろう。それでナマエに会いに行こう。

「平介、携帯」

 母さんに言われてテーブルの上に置いた携帯が震えていることに気づき、何を作ろうかと思いながらぼんやり携帯を開けばナマエだった。

『平介のケーキが食べたいです。』

 了解ですナマエさん、会いに行くんで待っててください。


20110730
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