明日はついにセンター試験で、私は全国の誰よりも緊張していると思う。受験生ではないのに。

「ああーもうーどうしよう若ー」
「何であなたが緊張してるんですか」
「逆に何で若はそんなに落ち着いてんの?明日だよ?24時間切ってるんだよ?勉強しなくて大丈夫?寒くない?風邪引かない?」
「今日も学校がありましたし今は店内なので寒くありません、ナマエさんが無理やり頼んだ生姜湯を飲んでるので風邪を引くことはないと思います、他に質問は?」
「えっと、本当に大丈夫?勉強いいの?私といる時間なんかないんじゃない?ってゆーかこんな喫茶店でのんびりしてる場合じゃないんじゃない?」
「大丈夫です、やるべきことはやりましたしナマエさんがここに行こうと誘ったんじゃないですか、最近会ってませんでしたし」
「ああーもうー若いいいい」
「何ですか」
「もう私死にそう、センター試験って何で二日間なの?死にそう」
「去年より興奮してますね」
「うん、興奮してる…あれ?緊張だよ!緊張してるの!」
「興奮してますよ」

 若は我慢できなさそうに笑った。その顔に一瞬ホッとしたけど、反動のようにまた心臓がドキドキし始める。何だか泣きたくなって、目の前にあるココアをジッと見つめたら更にドキドキしてしまってどうしたらいいか分からなくなったからパッと若を見たら若は生姜湯を飲んでいた。私と目が合うと呆れたような顔をする。

「その顔やめてください」
「だって…」
「そんなんじゃ明日明後日持ちませんよ」
「去年も言われた気がする…」
「俺も言った覚えがあります」
「うー…」
「関ヶ原の戦い」
「1600年!」
「正解です」
「これも去年やった気がする…」
「そうですね。何度やっても関ヶ原の戦いが何年か分からなかったのがセンター前日には完璧に覚えててびっくりした覚えがあります」
「1600年ってのが逆に覚えれなかったんだよなぁ」
「おかげさまで俺は覚えることができましたが」
「…私、若に何もしてあげれなかったね」
「は?」
「若は勉強に付き合ってくれたのに」
「ナマエさんはナマエさんで大学が忙しかったんでしょう」
「でも、もっとしてあげれることがあったよね」
「例えば?」
「え、勉強を教えるとか…」
「ナマエさんが?」

 小馬鹿にしたように若は笑って、生姜湯を口に含む。私は生姜湯が苦手なのでよく平然と飲めるなぁと思わず感心した。そんな若を見ていると大丈夫なんだろうとは思うけど、万が一、億が一を考えると心臓が暴れ出すのだ。微かな物音にも怯える心臓が本当に情けない。

「センターがダメでも二次があります。二次がダメでも後期があります、後期がダメでも来年があります。大丈夫ですよ」
「来年って!」
「来年の何が悪いんですか」
「何がって…」
「まぁ落ちる気はしませんけどね」
「…だよね」
「とりあえず前期の合格発表まで待っててください」
「心臓持たないよ〜」
「去年も同じこと言ってたので大丈夫です、持ちます」

 そう言って若は生姜湯を飲み干した。去年も同じこと言ったかなぁ、必死だったからなぁ、今年も必死だから来年になったら忘れてるかも、と私もココアを飲み干した。

「よく生姜湯なんて飲めるね」
「あんたが頼んだんじゃないですか」
「風邪予防にいいって誰かから聞いたから…」
「俺が教えたんですよ、去年」
「…私もしかして、生姜湯飲んだ?去年」
「飲ませました」
「ちょっ、それで私生姜湯が嫌いになったんだよ!」
「風邪は引かなかったんでしょう?」
「……験担ぎになりそうだね」
「受かりそうです」
「…うん、頑張れ受験生」


20110113
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