あぁ!人一人分くらい大きなモンブランが飛んでいく!せっかくフォーク持って来たのに!

「待つブラン!!」

 自分の声にビクッと目を覚ますと、向かいのソファーに座ったべーやんが呆れたような目でこっちを見ていた。なんだ、夢か、こっちはお腹いっぱいモンブラン食べる気満々だったというのに。

「何の夢を見たらそんな寝言が出るんですか」
「おっきいモンブランが飛んでいく夢を見たらだよ。あーショックだー食べたかったー」

 勢いをつけて起き上がり、そのままうなだれたら寝癖やらのボサボサした私の髪の毛を見てべーやんが「ほんっと、きたねぇナリだな…」と呟くのが聞こえた。聞こえないようで聞こえるように言うあたりが憎らしい。乱れた髪の毛を整えていると、べーやんがふと呟いた。

「アクタベ氏とさくまさんとアザゼルくんは依頼に行ってるので留守番を頼むとのことです」
「あ、はいはーい」
「しかしアクタベ氏は貴女とさくまさんには甘いですな」
「え?何で?」
「私がいるとはいえ、普通留守番を頼む者を昼寝させたまま出かけますか?光太郎くんならば蹴り起こされて脅し文句と共に頼まれるでしょう?」
「あーなるほど。ほら、私可愛いからさ」
「よだれを垂らしながら半開きの目で寝るのが可愛らしい女性ですか」
「見ないでよ!」
「嫌でも目に入るんですからこっちとしても非常に不快でしたよ、非常に」
「ぐ…!」
「大体、仮にも仕事中に上司の前で堂々と昼寝すること自体が間違っていると気づかないのかね」
「もーうるさい!そんなに言うならべーやんも昼寝すればいいじゃん!」
「そういうことを言ってるのでは…」
「はい、膝枕してあげるから!」
「…」

 そう言って「来い!」と手を広げると、べーやんはいつもの何を考えているか分からない目で私を見た。いや、強いて言うなら「この女は…」と言う目だ。べーやんはそんな目のままブーンと飛んできて、お?ほんとは膝枕したいのかな?とか思っていると右手を大きく振りかぶった。え、ちょ。

「まずそのよだれまみれの汚ぇ顔洗ってから来いやこの腐れアマ!!あとまだ寝癖ついてんだよバァーカ!!」
ぺちーん!!
「あいたぁ!」

 叩かれた。

「何よ!じゃあ顔洗って髪の毛ちゃんとしてきたらいいってわけ!?」
「そういうことを言ってんじゃね…って聞けクソビッチが!!」

(5分後)

「ただいま!」
「…まぁそれなら客に見せてもまだいいですね」
「お、落ち着いたねべーやん!」
「貴女にいちいち荒ぶってられませんよ、私は紳士ですからね」
「ははっ、紳士は罵声浴びせながら渾身の力で頭叩いたりしないよね!」
「今日の新聞の一面はまた嫌な内容ですな」
「あ、ほんとだー」

 と、いう感じで今日は当然のように膝の上にちょこんと乗ってきたべーやんと一緒に新聞を読みながら留守番してました。

「何だかんだ仲良しですよね」
「違うよさくちゃん、べーやんが私のこと大好きなだけだよ。私もだけど」
「いや仲良しじゃないですか」


20110619
書いてて楽しかった
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -