廊下で転けた。転けた拍子に「あひゃあ!」みたいな声が出て、放課後だし部室棟だし誰もいないだろうと思いつつ赤面しながら膝を見たら擦りむいて真っ赤になっていた。すごい勢いで擦ったらしく、急に火傷したみたいに熱くなった傷に思わず涙目になる。痛いというか熱い、でも痛い、ってゆーかなにこれ、何で転けたの私。

「いたいぃぃぃ…」
「おーいナマエー?大丈夫か?」
「!」

 声をかけられて顔を上げると、すぐそばの部屋からボッスンが顔を出していた。あ、そういえばここスケット団の部室だ。

「ボッスン…めちゃくちゃ痛い…」
「あー痛い!それは痛い!ちょっと来い、手当てしてやっから!」

 私の傷を見て、しかめっ面をしたボッスンはすぐに部室に引き返した。それについて行って部室に入ると、珍しくヒメコちゃんもスイッチもいなくてテーブルに折り紙が散らばってるだけだった。
 一人寂しく折り紙してたのか…と思っているとボッスンが救急箱を持ってきて、座れよと私に勧める。
 畳のところに大人しく座ると、ボッスンが床に座って私の足を見て「痛いなこれは」というような変な微妙な顔をして、「じゃ、失礼します」と足を手当てしてくれた。何だかくすぐったくて、所々どこか緊張したけどバレないように部室を見渡したりしてみる。何だろうかあのアフロ、とかスイッチのパソコン本格的だなぁ、とか相変わらず騒がしいような心地いいような部室だなぁ、とかボッスンの頭ぴょんぴょんしてる、とか椿くんと髪質似てるかも、とか意外にボッスンの手大きいなぁ、とか。

「よし、できた」
「わーありがとう!ボッスン器用だね」
「まぁな、これくらい」
「さすが一人で折り紙してるだけのことあるわ」
「うっせーよ!お前なんか転んだ時の声すごかったぞ!すっげー恥ずかしかったぞ!」
「な…!」
「あひゃあ!って言ってたからな、あひゃあ!って!」
「い、言ってないよ!」
「いいや、言ってた!ぜってー言ってた!」
「もううっさい!死ね!」
「気安くそんなこと言っちゃいけねーよ!?」

 恥ずかしくて顔を逸らすと、「ったくよー」とか文句を言いながらボッスンは救急箱を置いて私の隣に座り、折り紙を折り始めた。それをちらりと見る。やっぱりボッスンの手、意外に大きい。

「ボッスンの手、意外に大きいね」
「意外にって何だよ」
「いや、だって、ほら」

 折り紙を真ん中から綺麗に折るボッスンの手のそばに自分の手を持って行くと、やっぱりボッスンの手の方が大きかった。男女では根本的に体のつくりが違うんだなぁと思うくらいで、何だかボッスンにはそんなイメージがなかったので少し驚いた。

「そりゃあな」

 そう言いながらボッスンは私の手のひらと自分の手のひらを合わせた。熱い。じわじわ熱くて、やっぱりボッスンの方が大きい。
 顔の目の前で手を合わせてるからか、ふとボッスンと目が合った。あ、なんだ、かっこいい、かも。

「…」
「…」

 あれ、なにこれ。
 気づけばボッスンは真っ赤になっていて、気づけば私も真っ赤になっていた。あれ、なにこれなにこれなにこれ。ぴく、と指を動かしたらボッスンもぴく、と動く。ぴったりくっついた手のひらは意識すればするほど熱くて、でも気持ちよくて、この手のひらは目の前にいるボッスンなんだと思うとなんか変な感じがした。ボッスンってこんな「男の子」だったっけ。変な空気だし手を離したいけど離れない。いや離れないことはないんだろうけど、なんか、心のどこかで、本当に見つかりにくいところで、離したくないって思っているような思ってないような。熱い、熱い、擦りむいた時より何だか熱い、これは一体何だろう。

「…何してんねんアンタら」
「「あひゃあ!」」
「あひゃあ!て」


20110522
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