何でもできちゃう完璧な人だけど、だからこそ彼には敵が多い。本人は雑魚は相手にしねぇって感じだけど、私はそんな雑魚から彼を守らなきゃと思うのだ。妬みとかそういうものって何だかんだ不愉快だと思う。彼からしてみれば最早そんなもの屁でもないかもしれないけど、例え彼にとって石ころみたいに小さな障害でも私がひょいっと取り除いてあげたい。だって好きなんだもん、大好きなんだもん。

「ね、だから何すればいいかな?」
「別に、お前の言うとおり雑魚は雑魚だしな」

 跡部はそう言いながらハッと笑い、ぺらりと本を捲った。話しながら読書するなんて器用な奴だ、そんなにオールマイティーだから敵が増える一方なんだよ。

「些細なことでもいいからさ」

 跡部のじいやが入れてくれた紅茶のカップを不必要に握りながら言ったら、跡部は私の何かに気づいて視線を本から私に向けた。日本人離れした綺麗な目に一瞬見とれ、何度も見てるのにと恥ずかしくなる。跡部はそんな私には気づかなかったのか眉間にシワを寄せて言った。その顔は威圧感があってちょっと怖い。

「何かあったのか?」
「……跡部のファンに呼び出された。…けど跡部がどうにかしてくれた、んでしょ、昨日。宍戸が教えてくれたよ」
「宍戸か…余計なことしやがって」
「ごめんね、ありがとう」
「お前が謝ることじゃねーだろ」
「でも私がもっと可愛くて、家柄もよくて、何でもできて、跡部に釣り合ってたら跡部を心配させることもないのにね」
「…」

 何かを訴えるような目に少しいたたまれなくなった。綺麗な顔立ちに綺麗な瞳、目力も強いしインサイトだしおまけに好きな人だからつい萎縮してしまう。でもこれは素直な気持ちだ、と私は少しトーンを上げて続けた。

「だからさ、些細なことでもいいから私も跡部のために何かしたいよ」
「じゃあ自信だけ持ってろ」
「え?」
「俺の女だという自信だけ持ってればいい。それにあんなの、守りたかったから守っただけの話だ」
「…そんな台詞言えるの、この世の中できっと跡部だけだよ」
「言われるのはお前だけだぜ、ありがたく思えよ」
「うん、嬉しい」

 そう言ったら跡部は満足そうに笑ってくれた。私も笑うと、跡部はいいから食えとさっきじいやが紅茶と一緒に持ってきてくれたケーキをすすめてくれたから遠慮なくフォークを掴んだ。
 私は彼に守られてるけど、やっぱり私は彼を守ってあげたいわけで、そこんとこは昨日もいろいろ教えてくれた頼りになる宍戸にでも相談しようと思った。今は彼の愛だけ享受しよう、世界で一番かっこよくて美しくて凛々しくて完璧な彼の愛だけ。

「あー美味しい、幸せ、跡部大好き」
「…どこ読んでたか分かんなくなったじゃねーか」

 訂正。世界で一番かっこよくて美しく凛々しくて完璧で可愛い彼の愛を私は今日も享受して、私も同じくらいかそれ以上愛を捧げて、幸せに生きていきます。


20110505
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