冷蔵庫を開けるとびっくりするほど大きなプリンがあって、そのプリンのパッケージにはでかでかと「俺とナマエの 食うべからず」と書かれてあった。何あの人、何可愛いことやっちゃってんの、ってゆーか俺って。いや銀ちゃんしかいないけど、そりゃあ。自然とにやつく顔に恥ずかしくなって、たまらず思いきりバタン!と冷蔵庫を閉める。すると台所に誰かがやってきた。

「どうしたナマエ、またアイツか」

 アイツとは一昨日逃したGのことだろう、背後で銀ちゃんが殺虫剤を振る音がしたけれど未だに顔がにやついてるもんだから振り向くことができない。私はまた冷蔵庫を開けて、何かを探すふりをした。

「何でもないよ」
「何探してんの。いちご牛乳なら新八が買ってくるぜ」
「あ、そう、うん」
「? ナマエ?」

 銀ちゃんが近づいてくる気配がする。ああああどうしよう、こんなにやついた顔見られたらからかわれるに決まってる、戻れ戻れ戻れ!
 必死にほっぺをつねったり伸ばしたりしていたら、銀ちゃんが私の隣にやってきて私の顔を覗き込んだ。あぁ、やめてくれ!

「…何にやついてんだ」
「いや、あの銀ちゃんが…」
「あ?俺?」
「プリンに可愛いこと書いてたから…」
「何……」

 どうやら銀ちゃんは自分がプリンに何を書いたか忘れていたらしい。プリンを見ると固まって、ぎこちない笑顔が赤く染まっていてこっちまで恥ずかしくなったけれど、尚更にやけは治まらない。銀ちゃんはあたふた言い訳をし始める。

「いやこれはだな!コンビニでたまたま見つけて、別に俺一人でも楽勝だけど美味そうだしナマエも喜ぶかと…じゃねぇ、違う、あーあれだ、書いとかねぇと神楽のやつが食うかもしれねぇだろ、うん、そうだ、断じてあれだ、ナマエが驚いて喜ぶ姿を期待したわけじゃ、あ、想像はした、想像はしたけど、期待してはねぇから!それだけだから!」

 想像したってそれでも恥ずかしいよ、と言うのはお互い恥ずかしいだろうからやめておく。銀ちゃんは真っ赤な顔でぎこちない笑いのまま殺虫剤をハイスピードで振っていて、なんかもうこの恥ずかしい空気を切るタイミングがなかなか見つからない。
 すると新八くんが買い物から帰ってきて台所に直行してきた。焦った私たちは何故か冷蔵庫に潜り込もうとして「何してんのアンタら!!」とつっこまれた。

「ちちち違うの新八くん、Gがね」
「えっ冷蔵庫にGが!?」
「Gがプリンに可愛いことするから…!」
「どういうことですかソレ、Gって可愛いことできるんですか、あと銀さん何でそんなに真っ赤なんですか」
「勘弁してくれよナマエちゃん…」
「こ、こっちの台詞だよ!」
「何なんですかこのピンクな空気、僕邪魔ですか」


20110428
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