ジーノの言葉の全てはキラキラ輝いて私の頭の周りをクルクル回ってから軽やかに脳内にやってきた。彼の言葉には得体の知れない存在感というか、ちょっとしたパワーがあると私は思う。

「ほらナマエ、綺麗だよ」

 ジーノの愛車の助手席に乗り込み、ボーっと流れる道路を見ていたらジーノがふとそう言ってジーノの方を見た。前を向いていたときには気づかなかったけれど綺麗な紅葉が景色を飾っていて、思わず声が漏れる。

「わぁ…」
「起きた?」
「え、寝てないよ」
「何だかボーっとしてたから」
「あぁ、ごめん」

 そう言ったらジーノは軽く笑った。ボーっとしてたけどジーノの言葉はすぐ入ってきたよ、しゃらんっと入ってきたよ、なんて言えなかったけど私は紅葉を見てるふりをしてジーノを見つめる。
 うん、かっこいい。一挙一動が気品溢れていて王子というあだ名が誰よりも似合っていると思う。
 緩やかに車はスピードを落として、紅葉の波がざわざわと少し不細工になった。信号が赤になったらしい。前を向こうとしたらジーノが私の方を向いて、当たり前のようにキスをした。

「なっ…」

 いきなりのことにキスなんかで今更驚かないのに思わず驚いてしまい、ジーノも一瞬きょとんとしたけどすぐ可笑しそうに笑う。

「真っ赤だよ」

 無言でバシ、と腕を叩くとジーノはごめんごめん、と笑いながら言って信号が青に変わったのを見ると再び車を緩やかに発進させた。恥ずかしい、と手で頬を冷ましていたらジーノは軽やかに呟く。

「何かの魔法みたいだね」

 また頭の周りをクルクル回ってからジーノの言葉が脳内をスキップするかのように入ってくる。
 あぁ、魔法、そうだ、ジーノのキスもジーノの言葉も全ては私を混乱させる魔法なのだ、ジーノは王子で魔法使いで、きっとこの紅葉だってジーノがキスして赤くさせたに違いない、って気がしてきた、けど、私の思考は恥ずかしすぎるだろうか。

「まぁ僕は王子だから魔法は使えないんだけど」

 ですよね。


101122

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