夢を見た。昔あった嫌なことの延長みたいな夢で、目を開かなければ涙がこぼれていただろう。目を開けたらすぐに涙は乾いた。
 目の前には同じ布団に入っている臨也の背中があった。規則正しく揺れているから寝てるのだろうと思う。私はもそもそと臨也に近づき、背中にぴたりとひっついてみた。思ったよりも熱い背中は気持ちがいい。手も頬もくっつけて、潜めるみたいに静かに呼吸をする。

「…なに…?」

 臨也が私に気づいて起きたのか、かすれた声でそう呟きながら振り向こうとする。それを防ぐように更に臨也にくっつくと諦めた臨也はまた私に背を向けた。

「臨也の背中あったかい」
「そう?」
「うん。手はいつも冷たいのに」
「心があったかいからね」
「ははは」
「笑うところじゃないけど」
「気持ちいい」
「…」
「臨也も人間なんだなぁって思うよ」
「何それ」
「人ラブとか言うからさ。自分は人じゃないみたいに聞こえるんだよね」
「ふぅん…」
「眠い?」
「眠いよ」
「私、邪魔?」
「別に。邪魔だと思うなら喋らないでほしいけどね」
「ははは。じゃあもう喋んない」

 そう言うとまた寝室は静かになって、臨也の背中はまた規則正しく揺れている。寝ちゃったかな?と少し体を動かしたら元からいた場所は暖かかったのに、他の場所のシーツの冷たさにびっくりして思わず臨也の足に自分の足をくっつけた。臨也の体がビクッと揺れる。

「ひゃっ」
「え、何今の声、臨也可愛い声出るんだね」
「ねぇ、寝れないの?薬なり拳なりあげようか?」
「永眠はやだな〜」
「じゃあ大人しく寝ろよ」
「冷たい。背中も足もこんなに暖かいのにさ」
「黙ってたけど俺実は冷たい奴なんだよ」
「なら私があっためてあげよう」
「うわっ、やめろっ」

 臨也に抱きついて足も絡ませて手をシャツの中に入れてやった。臨也の肌はやっぱり意外に暖かくて気持ちいい。臨也は嫌そうに動くけど、しばらくすると落ち着いた。そして諦めたようにため息をつく。

「本当に暖かいから嫌になるよ」

 どうやら私の体温が気持ちいいらしい。私も気持ちいいから臨也から離れられない。
 ねぇ臨也、こんな風に生きていけたらいいね。こんな風ってこんな風だよ。うーん、彼のことだからダメかな?ダメならダメで他の生き方をまだまだ二人で探せばいいよね、そうだよね、あ、眠くなってきた、そういえば何の夢みたんだっけ。

101103

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