「合格祈願に行こうや」と電話をしたら「普通正月とかやないんっすか、先輩が暇なだけやろ」と言われた。まさにその通りなわけだが、可愛い後輩の大学受験を応援したいのも本音だ。

「車に乗せたるで!」
『心中せぇっちゅーことですか』
「ちゃうわ!私のテクなめんなや!」
『やかましい。そんなに言うなら行ってやってもええけど』
「お前ほんまにツンデレやな!」

 と言うわけで光を車に乗せ、手頃な神社に着くと何だか街よりも涼しい気がした。それをずいぶん背の高くなった後輩に言うと「まぁ、そうっすね」と返されてずいぶん素直になったなぁと思った。大学に入ってからはあまり会ってなかったけれど、成長するものである。

「よっしゃ、気合い入れて祈るで!」
「神様も迷惑っすわ」

 やっぱりあまり成長していない。私は光を睨みつけ、五円を入れて手を鳴らした。隣で光も同じようにするのを瞼越しに感じつつ、テニス部後輩全員受かりますように!と念じる。何となく三回心の中で唱えてチラリと光を見れば、光も目を閉じて祈っていた。何だかんだちゃんと祈って可愛えわぁ、とほのぼのした気分になって笑っていると目を開けた光に「きもいっスわ」と言われる。可愛くない。

「あ、ここ茶屋もあるんやなー。ざいぜんあるかもしれへんで、光」
「それはボケなんっスか」
「え?何が?」
「アホやこの人…」
「何やて!これでも大学受かったんやで!アンタ志望校どこなん!あたしより偏差値高いんか!」
「でかい声出すなや」
「先輩に向かって言う言葉かソレが!」
「奢ってくれるんっスか?」
「当たり前やハゲェ!」
「ノリで喧嘩売るんやめろ」

 冷静なツッコミが入ったので大人しく光の背中に一発叩くだけにしといた。光は不機嫌そうに私を見下ろし、茶屋に向かう。さっきまで同じくらいの歩幅だったのに少し早歩きなところを見るとめちゃくちゃ食べたいらしい。やっぱりこういうところは可愛いと思う。そんなことを思っていたら光は言った。

「まだ迷ってる」
「え?」
「先輩と同じところやったらええけど、それやったら俺がしたいことがほとんどできん。系統違うし」
「は?何?どういうこと?」
「ほんまアホやな、先輩」
「せやから先輩に向かってその言い方、」
「ちゃんと言わな分からへんのか」

 何を、と光の背中に投げかけたら「好きやってちゃんと言わな分からへんとか、先輩ほんまアホっスわ」と光は背を向けたまま言った。ぶわっと風が吹いて、今の言葉が飛んでいったみたいに理解ができなくなった。え?と引きつった笑顔をすると、また光が言った。

「俺だけ合格祈願に誘うっちゅーことは、期待してええっちゅーことやろ?」

 余裕がない、何だか拗ねたような声に引きつった笑顔が思わずにやけた。やっぱり可愛え、期待してもええよと言ったら彼はいつもの不機嫌そうな顔を真っ赤にしてくれるだろうか。

100913

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