どうしても会いたくなってメールをしたら返信がなかった。あの人のことだから他の女の人といるかもしれないなんて考えが浮かんでしまうのはやっぱり彼が好きだからだし、今現在の私がとても寂しがり屋になっていることも大きいだろう。
 ピンポーン、と頭を揺らすような音にドキッとした。誰が来た、なんて一人しか思い浮かばない。急ぎすぎて転びそうな足取りで玄関に向かい、扉を開いた。ジーノはすごく急いでいる私が可笑しいのか、呆れ混じりに笑う。衝動的に抱き締めると、ジーノは玄関に入って後ろ手で鍵をかけた。ガチャン、という少し重い音に少しだけ安心する。

「これは誘われてると判断していいのかい?」
「…」

 誘っているかもしれない。とにかく今はジーノに触れたくて、この抱き締めた腕さえ放したくないのだ。無言の私にジーノの小さく「やれやれ」と笑い、私を抱き締めた。

「取材でね。本当ならもっと早く来れたんだけれど」
「ん…」
「ここからクラブが遠いんだよね、めんどくさいから僕の家に住んじゃいなよ」

 これでもジーノの本気と冗談は区別がつくと思っている。私の願望とかではなく、今のは本気だった。思わず顔をあげるとそれに気づいたジーノが目を合わせてくれて、優しく笑う。

「イタリアに僕のお気に入りのリング専門店があるんだ」

 うん、と小さく答えてキスをすると、今更ながらジーノがクラブのジャージのままなことに気づいた。支度も遅いし、いつもジャージで帰らずに私服に着替えるジーノが急いでくれたんだと思うと胸が苦しくてたまらない。練習後すぐに取材だったのか、とりあえずシャワー貸してくれる?とジーノは言った。そのままでいい、と言えばそのままお姫様抱っこでベッドに運ばれた。汗の匂いなんかほとんどしないから練習サボりながらやったんだな、と小さく笑った。

100721

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