今日はバイトの子が休みの上に客が多いから困っているとお登勢さんがやってきたのが午後10時で、お手伝いが終わったのが現在午前4時。空の端っこから淡い太陽の光が見えて、綺麗だなぁと思うと同時に欠伸が出た。すると欠伸と一緒に胃の中のものまで出てきそうになる。元来お酒は好きでもないし苦手なのだ。一歩踏み出すごとに胃がぐらぐら揺れる。
 なるべく音を立てないように階段を上がり、玄関を開ける。もちろん銀ちゃんも神楽ちゃんも起きているような気配はない。音を立てないように入り、音を立てないように廊下を歩く。もう4時だしいっそ寝ないで朝ご飯でも作ろうか、と大きく伸びをしてソファーを見ると私の寝巻きとタオルケットが置かれていた。多分銀ちゃんが気遣ってくれたのだろう。ふとテーブルに目を向けると湯呑みの下にメモが置かれてあることに気づいた。銀ちゃんの字だ。

 朝飯は俺が作るから寝なさい。 銀

 思考が読まれているみたいだ。軽く苦笑いしてメモをテーブルに置く。銀ちゃんに甘えることにして、寝巻きに着替えてタオルケットにくるまりソファーで眠った。少しだけ銀ちゃんの匂いがして、ちょうどいい気温なのも、ちょうどいいくらいの眠気と吐き気なのも、全部が銀ちゃんの優しさに感じれて嬉しくなった。

 目が覚めるとテーブルの上には朝食が並んでいて、遅れてお米や魚の香ばしい匂いが鼻をくすぐった。ゆっくり体を起こすと少しだけ体が痛くて顔が歪んだ。

「よう」
「銀ちゃん…おはよう…」
「そっち布団敷いたまんまだから寝てろ」
「ん…」

 焼き魚が横たわっているお皿を持った銀ちゃんはテーブルにそれを置くと、ぐだぐだしている私を見てから頭をぐしゃぐしゃと撫でた。

「お疲れさん。今日はゆっくり寝ろよ、ババアもさっき来て金くれたしよ」
「パチンコに使わないでね…」
「お前銀さんを何だと思ってんの?」
「マダオ…」
「まじで大好きな男?」
「うん…好き…」
「…朝からドキドキさせないでくんない」

 そう言うと銀ちゃんは軽く私にキスをして「歩けるか」と聞いた。少し頷いて銀ちゃんの手を掴んで立ち上がる。「おやすみ」と言われ「ん」と答えてから襖を開け、倒れ込むように布団にダイブした。銀ちゃんの匂いがして、また幸せな気分で目を瞑る。

100724

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