部活行きたくねぇな、と頭の隅で小さく、けれど確実に俺はそう思った。理由なんかないが、ただ何となくそう思う。ため息をついて、教室には誰もいないというのにそれを隠すように机にうつ伏せになった。授業じゃねぇと眠くならねぇもんだな、とぼんやり考えながら目を瞑る。外から誰かが叫んでいる声がした。あぁうるせぇ。
 ガラガラ、と教室のドアが開く。足音は静かで、歩幅は小さいから女子だろう。眠ったふりをしてやり過ごそうとしたけれど、入ってきた女子は俺の席の前に座った。誰だ、と考えていると頭に手を乗せられた。幼い子供をあやすようにその手は俺の頭を撫でる。思わずビクッと反応してしまって、勢いで起き上がるとナマエが少し驚いたような顔をした。

「何…してんだよ」
「あ、えっと…」
「…」

 ナマエは目をそらして手を引っ込める。俺はそれを見て少しイライラした。ナマエはすぐにもたつくし、意見をはっきりさせない。俺が好きなくせにどうせ曖昧にさせるんだろうとナマエの答えを諦めると、ナマエは自分の座っている椅子の背もたれを強くつかんで俺に言った。

「泣いてるかと思ったの」

 ナマエの中の本当に少ない勇気を振り絞ったその言葉に一瞬意識が飛んだ。怖いのか、ナマエが泣きそうだ。声なんか泣いてるのと変わらないくらい震えている。とか思ってるとナマエは本当に泣いた。慌てて袖で拭うと、面白いくらいにナマエは焦り始めた。その姿に笑うと、ぐっと何かがこみ上がってきて泣きそうになったけどすぐ引っ込んだ。あーナマエが好きだ。

100629

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