「なぁナマエちゃん、怒るようなこと言ってもいい?」
「…それ聞かなきゃダメ?」
「いや…聞かないなら聞かなくてもいいけど」
「聞く」
「…昨日吉原行った」
「…」
「いやかぶき町で晴太に捕まっちまってよぉ」

 銀ちゃんは言い訳のようにつらつらと話し始めた。私たちとの約束で、吉原に行くときは必ず言うことになっている。銀ちゃんが吉原で浮気をするだとかは考えていないが、言ってくれないとやっぱりやましいことがあったんじゃないかと不安になってしまう。小さなことだが、せめて報告してほしいのだ。
 晴太くんはあの街でいろんなことを学んで銀ちゃんみたいなやつを吉原に連れて行くのがとても上手い。その上昨日は私がお登勢さんのスナックで働く日だったから銀ちゃんも「まぁいいかな」と思ったに違いない。

「…そっか」
「…怒んねぇの?」
「いや…あのさ、銀ちゃん」
「?」
「昨日ね、私お登勢さんとこ行かなかったの」
「何で?」
「…近藤さんに捕まっちゃって、それで、あの、屯所で宴会を、ね…」

 膝の上で指を絡めたり解いたりしながら銀ちゃんの顔をチラチラと見る。
 私たちの約束のもう一つとしてあるのが「真選組に会ったときは言うこと」である。真選組副長の土方十四郎は私のいわゆる元彼であり、しかもドロドロした別れではなく円満に別れてしまったので今では良き理解者としてお互いを見ている。しかし現在の彼氏である銀ちゃんからして見れば、その感じが悔しいらしくこのような約束事ができてしまったのだ。吉原のことについてもお互い様だし、私たちは今のようにこの約束事を守っている。
 膝に手を置いていた銀ちゃんはリモコンを取り、つけっぱなしだったテレビを消した。ポカンとしてると銀ちゃんは私の指と自分の指を絡ませてキスをする。

「よし、今日は愛し合おうナマエちゃん」

 そのままソファーに押し倒され、またキスをした。銀ちゃんのふわふわした頭に指を突っ込みながら幸せを感じたけど、銀ちゃんが飲みに行っただけとはいえ吉原に行ったことが悔しくてしょうがなかったので思いっきり愛してやろうと思った。私を忘れられないくらい、他の女とキスをしても私を思い出してしまうようなキスをしてやろうと思う。しかし、先手必勝とばかりに銀ちゃんのキスが降ってくる。こうして銀ちゃんの愛は私に刻まれていくのだ、トシに触れたってどうにも思わなかったのに銀ちゃんに触れるとドキドキしてしまうくらい私は銀ちゃんのことを愛してるということを銀ちゃんは知らないだろう、だからこんなに悔しそうに私を貪るのだ。バカな人である。

100503

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