テニスが好きだ。私は女子テニス部部長として堂々とそれを言うことができる。残念ながら女子テニス部は大きな成績をおさめることもなく私たちは引退したが、男子テニス部は全国大会準決勝進出でほとんど別の部活だけれど素直に嬉しかった。そこに私もプレーヤーして立つことができていればもっと嬉しかったが、とにかく身近なあいつらが全国大会に行けたことが嬉しい。テニスを愛しているだけでこんなに嬉しいことがあったなんて、と改めてテニスの偉大さを知った。

「あたしな、ほんまに白石たちが全国大会行って嬉しかってん」
「それ何回言うねん」

 私の言葉に白石は笑い、私の頭を撫でた。長くて細い手が男の子だなぁ、と感じられる。
 帰ろうとしたら偶然、テニス部に遊びに来ていた白石たちと会った。白石以外の奴らはテニスコートで後輩たちとテニスをしている。久しぶりに近くで聞く音に嬉しくなった。

「何回でも言うたるわ、ほんまに嬉しかってん!」
「お前はほんまにテニスが好きなんやな」
「それは白石もやろ?」
「おん。まぁ、あいつらもやし、みんなやな」
「あたしもテニスしたい」
「お、謙也張り切っとるなー」
「財前くんとやな。あっ、惜しい!」

 謙也と財前くんのプレーを見ていたらやっぱりテニスがやりたくなってきた。ドキドキというかワクワクしている。いつまでたってもテニスに関わるとなると私の心臓ははしゃぎだすのだ。小さい頃、新しいおもちゃを買ってもらったときのような気持ちになって笑顔になる。そんな私を友達は笑うが、謙也とかは分かると言ってくれた。白石も「テニスはええよな」とにっこりと笑ったことを覚えている。

「ええなぁ、楽しそうやなぁ」
「うずうずしとるな」
「白石もテニスしたない?行こうや!」
「ナマエ、まだここにおって」

 白石の言葉にきょとんとなって、思わず綺麗な顔を見つめてしまった。白石は少し恥ずかしそうに笑って私に近づいて、テニスコートにいるみんなに見えないように手を握ってきた。
 意図が分からない、というか分かるには分かるけれどまさか白石が私を好きだなんて考えれなくて混乱して変な笑顔になってどもりながら白石に言う。

「ししっ白石、テニス」
「俺、テニスに嫉妬するで」
「なんっ」

 白石が笑った。ドキドキして、そのドキドキがテニスに似てると一瞬思ったけれど白石が更に私の手を強く握るからすぐに違う!と思った。
 なんやこれ、なんやこれ、息が詰まって思考が追いつかん、ほんまテニスしとる時みたいな感じやのに違う、なんやねんこれ。

「テニスと同じくらいナマエが好きや」

あかんあかんあかん、その言葉は私にとってうれしすぎるやろ、私かてテニスと同じくらい白石が好きや、熱い、目と口と胸と頭が熱い。
 「好きや」と小さく言うと口を手で覆って白石は笑った。急に恥ずかしくなって逃げたくなったけれど手を握られて逃げられない。離れたいけど離れたくなくて何かを訴えるように白石を見上げたら、ぐううと胸が詰まって泣きそうになった。テニスボールを打つ音が引退の日を思い出させて切なくなる。でも白石が優しく笑うからちょっと楽になった。
 この気持ちは何かに似ている。

010414
誕生日おめでとう!

×
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -