触れれば今にもパチンと割れそうな二つの瞳が俺を見ていた。まん丸くて茶色いビー玉みたいな瞳に薄く俺が映っている。こいつの目に俺がこんな風に歪んで見えるはずないのに絶えず瞳は俺を映した。何故だろうか。反射してるとはいえ、やけにくっきりしすぎじゃないか。瞬きが一つ。やっぱり映るのは無知丸出しなアホ面の俺で、更に可愛らしさを増す瞳が不思議でたまらなかった。意識したことはなかったが、この瞳が俺を映している訳で、この瞳が俺の動作をこいつに認知させる訳だ。茶色で煌めく小さなビー玉みたいな瞳が、だ。

「あの…恋次くん…」
「あ?」
「けっこう恥ずかしいかなーって…」

 ナマエが自分の顔を掴む俺の手を退けようと、小さな手で俺の手に添えた。しかし俺が手を離そうとしないからか、ナマエはその小さな手に力を入れる。

「馬鹿、力弱ぇよ」
「恋次に勝てるわけないじゃん!何なの!恥ずかしいし!見つめすぎ!」
「ばっ、見つめてなんかねーよ!見てただけだ!」
「一緒じゃん!はーなーしーてーよー!」
「うっせー」
「いひゃいいいい!!」

 ナマエの頬を引っ張ると、ナマエは真っ赤になって俺の手を叩いた。ヒリヒリするけど全然痛くなくて、笑いながら離してやった。ナマエは頬をさすって俺を睨み付ける。たかが茶色いビー玉だ、まったく怖くない。

「最悪…痛い…」
「ビー玉だな、お前の目」
「は?」
「茶色いビー玉みてぇ。安っぽいやつ」
「うわ、もしかしてすごい馬鹿にされてる?」
「妥当だろ、ビー玉」
「うるさい!」
「痛ぇよ!」
「恋次なんかビー玉以下だよ、黒いてんとう虫だね」
「あァ?」

 今度はナマエの手が俺の頭を掴んで、俺の目を覗いた。ナマエの瞳にはやっぱりアホ面の俺が映る。

「…アホ面」
「そんなに私を傷つけたいの、あんたは」
「違う、俺が」
「えっ」

 ナマエが驚いたすきにナマエの瞼に唇を押し付けた。それだけで頭がビリビリする。安っぽいビー玉のくせにな。

「な、何!?」
「お前見るときの俺ってアホ面してんのな」
「うん、私のこと好きでたまんないってアホ面してる」
「んなわけあるか。ビー玉のが好きだわボケ」
「私じゃん」


100211

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