ナマエが木から落ちたもんだから咄嗟に受け止めたら、ちょうど小十郎に見つかってややこしいことになった。小十郎が怒声を飛ばしながら近づいてくる間にナマエを逃がすとさらに怒鳴られる羽目になってしまった。屋敷に戻り、小十郎に延々と説教をされる。もう何分経っただろうか、内容は右の耳から左の耳に流れていくが、なんとなく同じようなことばかり言っている気がした。

「貴方は一国の主という自覚が、」

 あるに決まってんだろ、じゃねぇと今頃ナマエ連れて違う国にでも行ってるだろうよ。だが違う、俺の目的はそうじゃない。確かにナマエを連れて異国にも行ってみたいが、それはあくまでも天下統一を成してからの願いだ。ナマエとの結婚もそれまで待ってほしいと思う。婚約はすませたし、子供を作るのもいつでもいいがな。ありえねぇとは思うがもし俺が死んでしまった場合、ナマエと結婚していたらナマエは一生伊達家という名に捕らわれるに違いない。伊達家が没落しても消滅しても、結婚していなければナマエはすぐ伊達家から逃れられる。実際、俺にもしものことがあったらすぐ逃げろとも言った。ナマエは嫌だと言ったが俺のせいで彼女の一生を棒に振るのは絶対に嫌だった。あいつは幸せになるべきだと思う。

「一国の主が一人の女のために命を、」

 捨てるつもりはねぇよ。ナマエのために命を捨てる?それはナマエのためにはならねぇ。ただ小十郎、一国の主の前に俺は一人の男であり、ナマエの恋人だ。愛しいhoneyを守るのは男の仕事じゃねぇか。お前だって恋人が死にそうなときに助けないわけがねぇだろ、第一、ナマエを受け止めたぐらいで俺が死ぬわけねぇだろうが。

「死ぬ死なないの問題ではなく、気構えの問題です」

 気構え、ねぇ。
 そろそろ肩もこってきた。当たり前だ、さっきまで愛しのhoneyといたってのに今は小十郎の堅苦しい説教聞いてんだから。外に目を向けると、太陽の光がキラキラと輝いていて、いまこの状況だからこそ綺麗に見えるんだろうなと目を細めた。小十郎の声がもう一回り大きくなる。

(長ぇな…)

 そろそろ逃げるか、と考えていると襖が少し開いてナマエが覗いているのが見えた。小十郎は気づいていない。俺は笑い、立ち上がった。

「OK,悪かった、小十郎」
「本当に反省しておられるのですか」
「そりゃあ、もう」
「では次の戦についてですが」

 おいおい、まだ続くのか。ナマエがすぐそこにいるってのによ。
 小十郎は紙を取り出して俺に見せるべく広げ始めた。chanceだな。
 頭を下げている小十郎の横を走り、すぐ飛んでくる叫び声を背中に受けて襖を大きく開けた。驚いたナマエが俺を見上げて固まっている。もう一度、小十郎の叫び声。

「政宗様!」
「悪ィな、小十郎」

 言いながらナマエを抱えると、ナマエは小さく叫びながらも俺の首に腕を回した。「どこ行くの!?」と聞くから笑って答えた。

「どこまでも一緒に行こうぜ、honey」

 額にキスをすると、恥ずかしそうにナマエが笑う。後ろでさらにでかい小十郎の声が響いて、びっくりしたナマエの顔が変わって可笑しい。
 ああ、愛しいぜhoney!


100302

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