夕飯を食べ終わって、飲みたがる銀時をお風呂に追いやり、片付けを済ませたあとにソファーに座ってテレビを見ていたら銀時がお風呂が出てきた。暑いらしく、トランクス一枚で出てきてから向かいに座った神楽ちゃんが「乙女の前で最低ネ」と毒を吐いた。銀時はそれを気にせず髪を拭きながら私の隣にやってきて問う。

「なぁシャンプー変えた?」
「あ、気づいた?安かったからいつものと違うのにしてみた」
「すげぇ匂い」

 いつも買うシャンプーはいつも安いやつだが、今日は新商品で安くなっていたシャンプーを買ってみたのだ。詰め替え用だから使うまで気づかなかったらしい。
 嫌だったかな?と思っていると銀時から甘ったるい香りがしてドキッとした。女の子みたいな甘くて鼻腔にこびりつく香りだ。いい香りだけど、銀時には合わなくてドキドキした。

「いちご牛乳は?」
「あるよ。あ、こら、髪ちゃんと拭かないと風邪引くよ!そんな格好して!」
「母ちゃんかお前は」
「銀」
「へーへー、これ飲んでからな」

 どすん、と機嫌よさげに銀ちゃんはまた私の隣に座っていちご牛乳をパックのまま飲み始めた。このあとお酒を飲むに違いない。馬鹿は風邪を引かないというが何気にきちんと風邪を引く銀時のことだからこんなことしてたら確実に風邪を引くだろう。私や神楽ちゃんや新八くんにまでうつされたらたまらない。

「銀時、タオル。拭いてあげるから」
「あ?いいよ」
「良くない。風邪引いたら困るの私たち」
「銀さんが弱ると寂しーってか」
「うつったらめんどくさい」
「神楽、こんな女にはなるなよ」
「何言ってるね、ナマエは女の模範生ヨ」
「え、女ってみんなこんなんなの?」
「そうよ、分かったらジッとする!」
「うおっ!」

 ソファーの後ろに回って銀時の髪の毛をタオルで拭いていると、やっぱり女の子みたいな香りがして無性にドキドキした。何これ、銀時じゃないみたいなんだけど。変な感じ。

「おまっ、ちょっ、痛い!抜ける!禿げる!」
「天パって将来禿げるらしいよ」
「まじでか。俺もハゲ坊主さんの一員?」
「星海坊主ね。神楽ちゃんに怒られるよ」
「カットケンサンバー!!」
「おい神楽、机は壊すなよ」

 テレビに夢中な神楽ちゃんに笑うと、手が止まってしまって銀時が「終わり?」と聞いてきた。返事代わりにまた手を動かすと、ぶつぶつ言ってるのが聞こえる。

「何?」
「っつーか女みてぇな匂いだよな、これ」
「そーだね。嫌だった?」
「まぁどうでもいいけどよ」
「まだ今月はお金あるし、いつもの買ってもいいよ?」
「んじゃお前があれ使えよ。あぁ、お前と神楽か。女が使った方がいいだろ」
「…うん」

 こういう風な優しさって、ずるいよなぁ。適当で怠け者でオッサンみたいな人だけど、どうにも弱い。禿げるとか言ってごめん。

「シャンプーの匂いっていいよなぁ」

 やっぱりオッサンだ、こいつ多分いま美人のこと考えてるよ畜生。
 ボソッと呟く銀時は誰も返事をしないのにまだ呟いている。結野アナとか上品なシャンプーの香りってゆーか、香水じゃない自然にいい香りがするんだろうな。銀時の方からも「結野アナ」とかいう単語が聞こえる。やっぱり結野アナか。

「まぁ俺はナマエの匂いも好きだけど」

 急な言葉にびっくりして、悟られないように手は動かしたけど顔が熱くなるのが分かった。不意打ちだ、ずるい。さっきまでカトケンサンバに夢中だった神楽ちゃんが急にこっちを見て私を見つめて不思議そうに言った。

「ナマエ、顔が真っ赤アル」

 素早く銀時が顔をこっちを向けてニヤリと笑った。悔しい私は逃げるようにしゃがんでソファーに隠れようとしたが、隠れれるはずもなく銀時のニヤニヤした顔が上から覗いている。タオルで顔を隠そうとしたけどシャンプーの香りがそれを邪魔するように鼻腔を攻撃してきた。ちょっといつもの銀時の香りまでついていてさらに恥ずかしい。疼く体が動かない。
 銀時の顔が近づいてくる。神楽ちゃんにバレるに決まってるけど、ソファーに隠れてキスをした。

100228

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