ダメじゃない、と彼女は軽く笑う。まるで年の離れた弟を叱るかのように愛しそうに、優しく。俺の周りに散らかった雑誌を拾い、整え、積んでいく指は大人の指だった。同級生の女の子たちにはかもし出せないフェロモンが出ている指だ。年上の女らしい指。
 俺は体を起こして、読んでいた雑誌を積み上げられた雑誌に乗せた。ナマエさんは「ありがとう」となぜか礼を言い、何だか負けた気分になる。何に負けたかは分からない、ただの劣等感だ、多分。俺が勝てるのは身長や腕力しかないんだろうな、とナマエさんの細い腕を掴んで引いた。

「ダメ」

 また弟に言うように、ナマエさんは優しく俺を諌めた。匂いがする。ナマエさんのシャンプーと、なんかいやらしい香水が混ざった匂いだ。その匂いが果てしなく俺を責めるような気がする。何で、こんなに、ナマエさんは強いんだろうか。
 やっぱり腕力でしか勝てなかったから、無理やりナマエさんを引き寄せて腕に閉じ込めてやった。

「うん、俺、ナマエさんがいないと、ダメ」

 と言ったらナマエさんが「馬鹿」と少し笑う。その声に、弱い、もうダメだ。


100219

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