私の愛は半径50センチだ、といったら語弊があるかもしれない。でも本当にそうなのだ。
 例えば、銀ちゃんと同じ部屋にいて同じテレビを見ているとしよう。この時点で銀ちゃんと私が50センチ以上離れていれば私はテレビに集中できる。話しかけてきた銀ちゃんを無視したり「うるさい」と無意識に言っちゃって銀ちゃんを落ち込ませるくらい。ただ、銀ちゃんが半径50センチ以内にいるとそうもいかないのである。急に銀ちゃんの匂いが魅力的に感じられて、くるくるで白髪みたいな頭もたくましい体もちょっと触れたところから感じる体温も全部全部愛しくてたまらなくなる。言うなれば、全部が愛に変わってしまうのだ。急にイチャイチャしたくるのだ。神楽ちゃんがいようが新八くんがいようが、いやらしいメスだと自分で思うくらい銀ちゃんにべたべたくっつきたくなる。キスしたり、触ってほしいと思ったりする。
 だから神楽ちゃんがトイレに行ったり新八くんが台所に行ったりした隙に私は銀ちゃんの裾を引っ張ってキスをする。銀ちゃんは驚いたり、「…なに?」と特に感想を持たなかったり、「いやらしい奴だなァ」とニヤニヤしたり反応は様々だ。普段いやらしい奴だなとか言われたらイライラするけど半径50センチのマジック、私は体が火照って銀ちゃんを欲する。何とも不思議だ。
 セックスの後は銀ちゃんが私を抱き締めて寝ない限りは別々の布団で寝る。そうしないと私は銀ちゃんが愛しすぎて一睡も出来ないどころか、銀ちゃんの愛しい愛しい胸板にたくさんのマークをつけてしまって銀ちゃんに怒られるからだ。
 50センチ以上離れた布団の中で見る銀ちゃんの寝顔はただの恋人の寝顔で、安心して私は寝られた。時々私より先に起きた銀ちゃんはこっちを見ている。

「なに?」
「…ちょっと来い」
「やだ寒い」
「んじゃ俺が行く」

 まだ朝方で外は暗かった。銀ちゃんが半径50センチ以内に入ったとたんに、寝ているのに立ちくらみみたいな感覚が私を襲う。銀ちゃんがキスをしてきたから応えて、銀ちゃんの体をべたべた触ったらまた興奮してきて、そのままもう一度セックスをした。気づかれないように静かにしなきゃいけないから、たまにしか「銀ちゃん」と呼べないし、銀ちゃんも苦しそうな声を出すだけで滅多に私の名前を呼ばない。でも呼ばれたときは大変だ、体全体がきゅうん、となって意識が飛びそうになるのだ。
 行為が終わって、息を整えながらお互いの体温を分かち合う。銀ちゃんが私を抱き枕みたいに抱き締めて、私はひたすら銀ちゃんの胸板に愛を注いでいた。

「ねぇ、銀ちゃん、寝れない」
「俺も」
「何で?」
「だいたいあと少しすりゃ夜も明けるだろ」
「だよね〜明日は昼寝コース決定だ」
「あ、明日の飯炊いてねぇ」
「炊かないと神楽ちゃん怒るよ」
「今から炊くのもなぁ〜」
「どうせ寝れないなら炊けばいいじゃん」
「…」

 あーあ、と言いながら銀ちゃんは私を離して布団から出た。トランクスだけをはいて台所を向かう。銀ちゃんがいなくなったから私は自分の布団に戻って、台所がガタゴトいう音を聞いて私は目を閉じる。うとうとしていたらいつの間にか銀ちゃんが戻ってきてて、私が寝てると思ったのか静かに自分の布団に入っていった。

「…寝たか?」
「……起きた」
「あ、悪ィ」

 銀ちゃんがにへら、と笑う。わざとだ。そんな笑顔にまた立ちくらみみたいな感覚が襲ってきて、眠気がぶっ飛ぶ。あれれ、半径50センチに入ってないのに。

「こっち来いよ」

 さっき言われたときは嫌だったのになぁ、と思いながら銀ちゃんに近づいてキスをする。訂正しよう、私の愛は半径1メートルだ。


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