はりつめた空間に紫煙が浮かんでいる。その紫煙でさえこの状況を助長するかのように雰囲気を作り、私の鼻孔をねちっこく攻めた。時折紫煙が吐き出される彼の唇は美しく、ため息のような息は色気がある。私は内心怯えながらも彼の美しさに感心していた。血がよく似合うんだろうな、と改めて思う。彼は一際長いため息と紫煙を吐き、呟いた。

「まぁ、いいだろう」
「やったァァァァ!!」

 土方さんのお許しに私は思わず立ち上がって大きくガッツポーズをした。土方さんは先ほど私が提出した始末書と反省文を整えて机の上に置く。新しいタバコに火をつけ、吸い込み、吐き出した。
 先日、私は攘夷志士を捕まえる際にテンションが上がってしまい、民間の施設を半壊してしまった。それの始末書と反省文は何回出しても土方さんから「ダメだ」と突き返され、今回は五度目の正直でやっと受け取ってもらえた。

「これに懲りたらもうやるなよ」
「ちょー嬉しい!総悟と飲みに行こーっと!」
「お前勤務中だって分かってる?しかも未成年巻き込むな、その携帯ぶっ壊してやろうか」
「冗談ですって!これからは気を付けます!」
「その言葉も何回目だか…ハァ…」
「お疲れですか?どうしました?」
「完璧にお前のせいだろ、分かってんだろ、今何時だと思ってんだ」
「午前1時22分です!この腕時計、電波時計なんですよ!高かったけど可愛くないですか?」
「カワイイカワイイ」
「あ、でも土方さんセンスないからな〜」
「喧嘩売ってんのか」
「買ってくれます?」
「上等だ面に出ろコルァ」

 土方さんはいつもより更に瞳孔を開かせて剣に手をかけた。土方さんをからかうのは本当に面白い。寝付けないから暇だし、ちょっと相手をしてもらおうと私も剣に手をかけると、お気に入りの時計がチラリと見えた。あり?

「土方さん土方さん!」
「あン?んだよ」
「見て見て!これ1時23分!いち、に、さん、ですよ!」
「…お前手首細くね」
「見るのそこじゃないから!掴むな!え、ちょ、待っ」
「こんな遅くまで仕事頑張ったんだからいいだろ」
「深夜のテンション怖ぇ!きゃあ!」

 紫煙が天井にたまっているのが見える。彼の大きな手が私の頭を包み、煙草が染み込んだ舌が脳内を揺すぶった。霞む視界で彼が笑った、「興奮する」。真夜中、屯所は静かに私たちを煽る。


100127

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