「なんかお前の手って変だろ、銀さん見るたびに思うけど。なんか貧乏人っつーかよォ、気品がないよね、うん。なんか曲がってるしね、爪ちっせーし、爪もお前これ磨くべきだろ、こういうとこまで気を配る人間にならねぇと心まで汚くなっちまうからね。銀さんの手見てみコレ。…いや、違、これチョコじゃねぇよ、アレだ、定春のウン…だァァァ嘘!嘘だっつーの!いいからちょっと来なさい、んでその汚ェ手見せろ。汚いっつーか不恰好だな。生まれたてのカンガルーみてぇな。…え?嬉しい?嬉しいの?アレよく見てみろよ、そこまで可愛くねぇから。いやお前は可愛いけどね。……あー、うん、今のナシ、ナシな。ナシっつってんだろーがニヤニヤすんな折るぞ。いいの?折っちゃうよ?ボキッといっちゃうよ?この不細工な指ボキッといっちゃうよ?ポッキーのごとく。…あぁそうだよ、ポッキー好きだけどね!バッ、お前のことは別に、あの、アレだ、うるせぇなちょっと黙って俺の話きけよ!…あ?黙れって。…あ、いや、すいませんちょっと聞いてください。あー…アレだ、アレだよ、俺が言いてェのはだな、お前の指は不細工じゃん?だからちょっとでも着飾った方がいいと思うんだよね、うん。ほら、今時の女って頭にでっけーリボンとか花とかつけてたりすんじゃん、あんなカンジ。と、いうわけでコレ」

 長々とした言葉のあとに、私の不細工な手を掴んだ銀ちゃんの左手に力が入って、銀ちゃんは握ったままだった右手を私の不細工な手のひらの上で開いた。生暖かいものがキラリと光りながら転がる。手のひらの細いシルバーの輪のように私の目が丸くなった。
 銀ちゃんが「ん゛ん゛!」と喉を鳴らす。

「…指輪?え?何?プロポーズ?今のプロポーズなの?」
「いや、アレだよ、俺の給料三ヶ月分でお前の指を綺麗にしてやるっつってるだけだから」

 銀ちゃんの手が熱くて銀ちゃんを見上げたら珍しく少し赤くなっていた。
 プロポーズじゃん、って言う前に涙が溢れて銀ちゃんがしどろもどろに何かを言う。「ちょ、おまっ」とか「やめてくんない何か俺も泣きそうなんだけど!」とか。
 何度も何度も銀ちゃんの長くて綺麗な指が私の涙を拭って、片方の指は私の銀に光る綺麗な指と絡んだ。


091123

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