「あれ?総悟しかいないの?」
「なんか文句あるんですかィ」
「いや、怪我しちゃったから土方さんあたりに手当てさせようかなって思って」
「みーんな見回りでさァ。で、怪我って?」

 総悟の近くに座ると、総悟が寝転がったままの体を引きずってやってきた。アイマスクをつけっぱなしのところを見ると、寝てたに違いない。
 私は素直に右腕の袖をめくって見せた。山崎が応急措置で巻いてくれた布が真っ赤になっている。

「ありゃりゃ、けっこう派手にやられたなァ」
「浅いと思うんだけどね〜」
「俺が手当てしてやらァ」
「え、できるの?」
「バカにしてんのか。さっきボンド買ってきたんでさァ」
「工作気分!?」
「冗談だっつーの、待ってろィ」

 そう言うと総悟はのっそりと腰を上げて救急箱を取りに行った。戻ってくるなり救急箱を開け、中を物色し始める。

「ん〜」
「いや、なんか、ほんと総悟怖い」
「大丈夫でさァ、優しくするぜ」
「それが信じられないっつーの!」
「ところでどれが一番痛い消毒液ですかィ」
「やだ!忘れてたこいつドSだった!」

 逃げようとしたら怪我をした方の腕を掴まれて痛みで体が止まった。総悟はニヤと笑い「逃げられねぇぜ」と言う。局長、副長、今までお世話になりました。
 総悟は華奢なくせに握力が強い。片手で私を制したまま、器用に消毒液を綿につけたりしている。ちょ、待って、ほんとに怖いんですけど!

「しみますぜ」

 総悟の言葉にギュッと目を瞑る。冷たい感覚の後にすぐヒリヒリと痛むからビクッと動くと、総悟の動きが止まった。恐る恐る総悟を見たら「痛いですかィ?」と問う。あれ?ぐりぐりとかされるかと思ってたから拍子抜けだ。

「だ、大丈夫」
「まぁちょっと我慢してくだせェ」
「うん」

 痛いけど総悟の手当て自体は優しいものだった。私の腕を掴んでいた手さえ緩んでいる。総悟を盗み見ると、何を考えてるのか全く分からない顔をしていた。消毒液を塗り終えて、総悟は今度は包帯を取り出した。それをぼんやり見ていたら総悟と目が合った。

「なに?」
「いや、怖がってたなァと」
「笑うな」
「嘲笑ってるだけだぜィ」
「ムカつく!」
「動くなよ」

 総悟がまた静かに私の腕の治療をし始めた。きつくてちょっと痛い。

「しかし、女に傷負わせるなんてなァ」
「…総悟が女の子扱いしてくれた」
「何言ってんだィ、俺はいつも紳士だろ」
「どの口が言うの」
「この口」

 総悟は顔を上げて、自分の唇を指した。うわ、綺麗、女の子みたいな唇だ。

「女の子みたいな口」
「…その口塞いでいいか」

 怒ったらしい総悟は私の頭をガシッと掴んで、顔を近づけた。え、待って、うそ、ないないない!これはない!キス?キスフラグ?
 またギュッと目を瞑ると、頭突きをされる。

「いたァァァ!!」
「お、いい音」
「何すんの!」
「女なんだから油断すんなよって教えてあげてるんじゃねェか」
「もうちょっと優しく教えてくんない!」

 おでこを押さえて涙目で訴えると、総悟はおかしそうに笑った。中性的な顔の印象が強く出ている。

「顔はいいのに勿体ねェや」
「その言葉そっくりそのままバットで打ち返すよ」


091121

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