ほんまなんなんやろか、俺の彼女さんはすぐ泣いてまう。ため息をゆっくり吐き出した。俺が怖いのか嫌いなのかわからへんけど、すぐ泣く。ほんで自分でも自覚してるからか、すぐ「ごめん」って言う。別に俺は謝って欲しかったわけやないから、何も言わない。きっと彼女は俺が怒ってると思ってさらに泣きたくなるんかもしれへんけど、俺かて慰める心当たりもなければ理由もなかった。それ依然に、俺はガキやからどうすればええか分からんかった。泣かせたくはないとは思うけれど、慰め方も分からんし、っちゅーかほんま何で泣いてんのかわからへんから正直イライラしてまうし。言いたかないけどイライラしてまう。せやから言うたら言うたで自己嫌悪や。あーどないすればええねんやろ、分からん。
 相変わらず彼女はごめんごめんばかりで、一つ年上とは思えないほど子供らしかった。悪い意味で思ったわけではない。彼女がもしお菓子一つで泣き止むならすぐに与えるのに、と思う感じ。まぁ実際の彼女はお菓子程度じゃ泣き止まんと思うけど。

「何で泣くんすか」

 不思議に思うから口に出しただけなのに、彼女の目にはみるみる涙がたまった。少し面白かったけれど、彼女の目は怯えてるようでいい気はしない。

「ごめん」

 答えになってへん、と言いたいところを抑える。そんなん言うたらさらに泣いて収拾つかんくなるということくらいは分かっていた。
 どないしろっちゅーねん、ほんま。

「…うっとい」

 そう呟いたら彼女はかすれた声でごめん、とまた言った。ちゃう、欲しいんはそんな言葉とちゃうねん。
 ため息も悪く言うのも我慢してると体がだんだん重くなっていくのが分かった。気だるくて、まだ泣き止みそうにない彼女の細い肩に頭を預けると、一瞬で彼女の体が強ばった。さらに力を抜くと、彼女の匂いが浮き彫りになってドキドキした。
 好きなんやなぁ、俺。この人が。やっぱりこの人には泣き止んでもらいたいと思う。俺に彼女を泣き止ますことができるやろか。

「泣かんでもええやないですか」
「ごめ…」
「何で泣くんすか」
「財前」
「名前がいい」
「…光」
「うん」

 彼女の俺を呼ぶ声が今にも泣きそうに震えて、俺まで泣きそうになった。あーもう何でもええわ、先輩いいにおい。このままおれるなら何だってええ、先輩とおれるなら。
彼女がおずおずと俺の背中に手を置いた。彼女が精一杯俺を励ましているようで、俺は震える声で「うん」と答えた。
 よう分からへんけど、なんか、これでええんちゃうんかな。

091029

×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -