元来、私は真面目らしい。というか一つのものに集中すると意識がそれにしか向かなくなるのだ。臨也にもよく呆れられたものだ。
 あれから気づけば随分時間がたっていた。いわゆる夕方と表現する時間帯だ。思いきり背伸びをして静雄がいる方向を見る。テレビが付けっぱなしだが、静雄は寝ているようだ。ソファーに寝転がっている。

「静雄ー?」

 声をかけつつ覗き込めば、ぐっすり眠っている静雄の体がゆっくり上下して少し可愛いと思った。本当に整っている顔だ。人は寝顔が一番綺麗だと聞いたことがあるけれど、まさに「綺麗」なのだ。惚れた弱みからかもしれないけれど、でもどこの誰が見ても彼を綺麗だと言うに違いない。

「静雄くーん終わりましたよー?」

 声をかけても静雄が起きる気配はない。私としてはこのまま静雄を見つめ続けるのも悪くないけれど、早めに帰った方がご飯を作る側としては有り難い。
 申し訳ない気もしたけれど静雄の肩を揺すって声をかけた。

「静雄ー起きてー」
「ん…」
「ご飯作りたいよー」
「ナマエ…?」
「ナマエですよー」
「…臨也の野郎が」
「ん?」
「ナマエを連れて行く夢みた」
「ははは」
「笑い事じゃねぇよ…」
「それはないよ、もう別れたし」
「あの野郎なら分かんねえだろ…」
「ないわよ。一度興味を失ったものにまた手を出すと思う?悪いけどまだしばらく静雄の家に居候させてもらうよ」
「…良かった」

 無邪気な顔で静雄は笑った。少し寝ぼけてるみたいだ。笑うと、静雄は大きく目を見開いた。完璧に目が覚めたらしい。顔が赤くなっていって、頭に手を当てて私を見ている。

「俺…」
「私が連れて行かれなくて良かった?」
「!」
「静雄?」
「悪ィ…」
「何が?何で謝るの?」
「いや…俺は…」
「私は嬉しかったよ」
「ナマエ…」
「私ね、静雄のことが」
「やめろ!」
「…」

ピリリリ!

 タイミングよく静雄の携帯が鳴り始めた。二人して静雄の携帯を見つめ、電話だと気づくと静雄は手を伸ばそうとしたからその手を掴む。

「何で、静雄」
「…!」
「言ってくれないと分からない。私に自分の気持ちを押さえ込むなって言ったのは静雄だよ」
「…トムさんが呼んでるから」
「静雄」

 静雄は私の手を振り解いて素早くソファーから離れた。ドアに向かおうとするから追いかけて声を出す。

「静雄っ」
「…悪ィ」

バタン!

「…謝らないでよ」

100616


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