ああ、願いが一つ叶うならば神様お願いします、私を金髪ブロンドのちゃんねーにしてください。
鏡の中の私はとても不機嫌そうな顔で私の赤毛を見ていた。キラキラ輝くブロンドでもなければ、艶やかなブルネットでもない。なんと、中途半端で、なんと、汚い。
特に太陽の光が当たった時なんて最悪だ。ブロンドのような眩い反射ではなく、まるで栄養が抜けた白髪のようにてらてらと輝くのだ。


そんな私に比べて、ああ、隣にいるサボは海の風を受けてふわふわした金髪をキラキラさせている。希望がその目に見えているかのような自信に溢れる横顔は私を更に卑屈にさせた。
ああ、私が金髪ブロンドのちゃんねーだったなら。

「そんなにおれの横顔がかっこいいか?」

私の視線にサボは意地悪そうに笑った。きらり。笑顔まで光って見える。

「その金髪が私のものだったらサボだって私の横顔に今の百万倍惚れてるよ」
「なんだ、またその話か」
「なんだじゃない」

私の卑屈な願いにサボはもう飽き飽きしているようだった。呆れたように肩をすくめて、また前を向く。その目には、どこまでも広がる海ではなく本当に全く別のものが見えているようだった。

「サボは」
「ん?」
「金髪以外なら何色が良かった?」
「はぁ?」
「ドラゴンさんみたいな真っ黒?コアラみたいなオレンジ?」
「くだらねぇ」

そう一蹴して、もう終われ!と言うようにサボは私の赤毛をぐちゃぐちゃにした。
やめろ!私のコンプレックスに触るな!せめてもの抵抗に毎日綺麗にブラシを通しているというのに!!

「色で何が変わるわけでもあるまいし」
「……」

言ってしまえば、私のこれは差別になるのだろう。私たちはそんな差別を、不平等を正すために活動している。ブロンドだから、ブルネットだから、人間だから、魚人だから、男だから、女だから、そんなものは私たちの目指す世界に到底必要はないのだ。
分かっては、いるのだけれど。
じゃあこの、彼の隣にいる時の私の惨めな悲しい気持ちはどうしたらいいのだろう。彼の金髪に、笑顔に、志に、憧れ焦がれて自分の身を、心を酷く汚く感じてしまう、この劣等感にどう折り合いをつければいいのだろう。
物悲しい気持ちのまま、ため息をなんとか堪えて髪の毛を整えているとサボは前を向いたまま言葉をこぼした。

「お前が金髪でも」
「うん」
「お前はうるせぇし」
「えっ」
「めんどくせぇし」
「ちょ」
「ガサツで」
「あの」
「でも変に几帳面で世話焼きでよく笑って」
「……」
「たまにおれのベッドに潜り込んで夜通し話して」
「……うん」
「一緒に風呂入ってそのままセッ」
「あーこらー!こらー!ワーーー!」
「ははっ」

昼間からなんてハレンチな!
慌ててサボの口を手で押さえたら、サボの笑い声が手のひらを撫でてくすぐったかった。少し熱くて、少し優しい。
サボは私の手を取って自分の指を絡ませ、綺麗な金髪を靡かせて私の手の甲に小さくキスをした。歌うように。誓うように。

「なぁ、色なんてどうでもいいよ」

あなたが望む世界はきっと、どんな色よりも美しくて愛おしいのだろうと思う。
願いが叶うのなら、その世界を彼の隣で、私は赤い髪を靡かせながら、前向いて、こうして手を繋いで見てみたい。


20180206
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