サンジが私たちの元へ戻り、ベッジのアジトにやってきたとき、みんなが少しだけ私たちに時間をくれた。「私とキャロットはお風呂いただいてくるから。何発か殴ってやりなさい」と言ってナミが出ていき、二人きりになった部屋にはとても重い空気が流れた。
サンジは私の目を見ないままソファに座り、小さな声で「……覚悟はできてるよ」と言う。

「言いたいこと、ある?」
「おれは……別に。謝っても許されることじゃねぇから」
「そっか。私はある」
「あぁ」
「だから今から言います、最後まで聞いてね」
「……あぁ」

サンジはとても暗い顔で、暗い声で、相変わらず私の目を見ない。私はサンジが座っているソファの向かい側に座り、サンジをまっすぐ見た。少し震える息を大きく吸い込み、吐き出してやった。

「私、いつかこんな日が来るんじゃないかなって思ってたんだ。もちろんサンジが王子様なんて考えもしなかったけど、サンジは優しすぎるから、いつか私たちのために自分から消えてしまうんじゃないかなって、思ってた。それが現実になってすごくムカついたよ。どうして自分だけを犠牲にしてそうやって消えてしまうのかって、ムカついた。絶対絶対殴ってやろうと思ってた。けど、帰ってきたから…殴らない。本当は、殴りたいけど。帰ってきてくれて私は嬉しい。すごく嬉しい。それで、本当はもうこんなことしないでって約束してほしいけど、サンジは優しすぎるし、私はそんなサンジを好きになってしまってて、多分変えられないから、だから、やっぱり殴ってやろうかと思うんだけど、でも、やっぱり、サンジの顔見たら、」

強がった声は段々段々震えていき、最後は息が詰まった。震える呼吸を精一杯吸い込めば、サンジが驚いたような顔で私をやっと見てくれた。目が合った瞬間涙がポロポロこぼれて、そしたらサンジはまた更に慌てるような表情で、私は、とにかく、もう、

「愛してるんだよ」

サンジはいつのまにか私の目の前に来ていた。あっという間に唇を押し付けるように奪われて、目が合って、今度は私から唇を押し付けてやった。





部屋から出て、しばらくするとナミたちがやってきた。「五発は殴った?」と聞くから「それ以上」と言えばナミは顔が腫れ上がっていないサンジをチラリと見て「はいはいご馳走さま」と笑った。


20180206
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