ドレスローザからサボたちが帰ってきた夜、軽くどんちゃん騒ぎとなった。ドラゴンさんの息子であるルフィくんとサボが義兄弟だと知っているからか、みんなルフィくんのことが聞きたくて仕方がなかったしサボもまた言いたくて仕方がなかったのだろう。
とは言え大変な任務の後である。コアラやハック、みんな疲れているに違いない。そう思って早々にお開きを促したものの当の私は眠れないでいる。
食堂の後片付けをし、窓を少し開けて換気をしながら温かいココアを淹れた。一口飲むと、自然とため息がこぼれていく。
はぁ。まぁ、とにかく、みんな無事でよかったなぁ。
嬉しそうなサボたちの顔を思い出して少し笑った。あんなに楽しそうに、幸せそうに笑うサボを今まで見たことがあっただろうか。恋人に見せるような笑顔とはまた全く違うものだったし、きっとルフィくん絡みでなきゃ見ることはできないだろう。それが何だか愛しかった。彼にとって、そんな存在が無事に生きてくれていて、よかった。

「ナマエ?」

食堂の入り口に立っていたのはサボだった。驚いて時計を見て、またサボを見て、反射的に「まだ起きてたの!?」と声が出た。

「なかなか眠れなくてな」

そう笑ってサボは私の隣に座る。私の手に収まっていたココアに目をやると、そのまま黙って私から取り上げて口に持っていった。

「サボの分も淹れようか」
「あぁ、頼む」

私のココアを一口飲んでからサボは答える。私は立ち上がって厨房に向かった。ゆっくりとサボは私の後ろについてきて、カウンターで肘をつく。

「お前の部屋に行ったんだけどいなかったから」
「あぁ、ごめん。片付けた後、なんか眠れなくて」
「おれもだ」
「サボは興奮しすぎたんだよ、ルフィくんの話で」
「かもな」

サボは何だか嬉しそうに笑い、私の手元でココアが出来上がっていくのを見ている。少し気恥ずかしくて何か話題を出そうと思ったがこういうときに限ってなかなか話題が出てこなかった。帰ってきたら話したいことがたくさんあったはずなのになぁ、と不思議に思う。

「……お疲れ様」
「ん?」
「ドレスローザ。大変だったね」
「その分、…幸せだったよ」
「そうだね、ルフィくんもサボも無事でよかった」
「あぁ、ありがとう」
「……話したいこといっぱいあったんだけどなぁ」


どうにも会話が続かなくて、そう苦笑いするとサボは私を見て笑った。あぁ、話したいことなんてどうでもいいや、やっぱり、あなたが無事に帰ってきてくれて良かった。
ミルクが温まって、少しお湯に溶かしたココアにそれを注ぎ込んだ。ゆっくりゆっくり色を変えていくその様子に、何だか空気まで優しく溶けていくようだった。

「……いつか」
「うん?」
「いつか、ナマエにルフィと会ってもらいてぇな」
「うん、私も会ってみたいよ。私の恋人を骨抜きにするのは君ですかって」
「なんだそれ」

私の冗談にサボは口を開けて笑った。私も笑って、カウンターに向けてココアを渡す。

「じゃあ、二人目だな」
「え?」
「おれを骨抜きにしたのは、ナマエで二人目」
「……ルフィくんが一番?」
「だな」
「もう!」

サボは冗談でそう言ったのかもしれないし、私も怒って返して見せたけど、本当はそれで十分だった。
サボにとって可愛い可愛いルフィくん。私はこの日の夜に「かわいいよ、ナマエ」とサボに耳元で囁かれてとても溶けました。なんて、恥ずかしい張り合いさせてくださいね。いつか会えることを心から楽しみにしています。



20180206
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