ベッドが揺れたような気がして目が覚めた。薄く目を開けると、サボがいつもの丸い目をしてこちらを見ているのとばっちり目が合った。ぎゃ。なによ。
ゆっくり布団の中に沈むように顔を隠すと、サボは「亀みたいだな」とへらへら笑った。なによ。

「いつから見てたの…」
「さっき。口開けて寝てたぞ」
「うーるーさーいー」

小憎たらしいことを言うサボの胸に布団の中から抱きついた。サボは笑いながらそれを受け止めてぎゅ、と軽く抱きしめてくれる。ゴツゴツしてるけどあったかい。胸板は厚く大きくて、少し汗ばんでいる。この逞しい身体がいつも誰かを守っているのだ。とても誇らしい気持ちになった。言うことは小憎たらしいけれど。

「いま何時だろ?」
「おれが起きた時は8時過ぎだったよ」
「そんなに寝てないね」
「ん」

少し暑くなったから布団の中から出たら、サボの顔が近くにあったからついでに唇にキスをした。サボは一瞬驚いた顔をするけど、すぐに笑って一つキスを返してくれた。子供みたいな顔するなあ、と思ったけど言わないでおく。
いつのまにかサボが腕枕をしてくれる形になっていたからそれに甘えて、サボに「なんか話して」と言うと「出た」とサボは呆れたように嫌そうな顔をした。
サボは革命軍の中でもいろんなところに行っているから、いろんなものを私よりたくさん見てきている。知らない海、知らない天気、知らない動物、知らない人種、本で読むよりサボに教えてもらうのが好きだ。サボの目を通して見たもの、感じたこと、それを教えてもらうのが好きだった。サボはどう思った?びっくりした?笑った?面白おかしくなくてもいいから、知りたかった。

「小人の話して」
「何回目だよそれ」
「小人ってみんなちっちゃいの?」
「話聞けよ」
「強いんでしょ?」
「…そうだよ。すげェ力持ちで強くて、悪魔の実食ってたヤツもいた」
「顔は?みんな同じ?」
「いや、人間みたいにそれぞれ違ったよ」
「どれくらい小さいの?」
「こんくらいかな」

サボは顔の前に手を持っていくと、指で大きさを示してくれた。その間からサボの顔が見える。その顔がなんだか可愛くて可愛くて。

「何で笑うんだよ」

小人の身長を示した指をそのままでサボは私の頭を小突いた。ふふふ、と笑いながらまたサボにキスをすると怪訝そうな顔をしたサボは腕枕をやめて私を抱きしめた。
私がキスをしたらサボがキスを返して、そんな遊びみたいなことを何回もしてクスクスと二人で笑う。さっきまでちょっと嫌そうな顔をしていたサボは存在しなかったみたいに、チラチラ見えるサボの目は優しくて唇は柔らかく弧を描いていた。ああ、好きだな。私、サボのこと大好きだな。愛しいな。

「腹減ったな」
「だね」
「そろそろ行くか」
「今度は見つからないようにね」
「そうだった」
「なんて言うんだっけ?」
「おれとナマエは仲良しだからだよ」
「正解」

鼻と鼻をくっつけながら、二人でやっぱりクスクス笑った。そして私の腰にあったサボの大きい手がなぜか一度お尻の方まで下がってひと撫でし、胸の方まで上がってくる。にやり、と男らしい笑顔。
あれ、ご飯に行くんじゃなかったかなぁ、なんて私はまたクスクス笑う。どうやら朝ご飯はお昼ご飯になりそうだね。まぁ、それもいいでしょう。


20180222
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